ハツコイ。

□Act.8 感謝 ―THANKS―
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早く、伝えたい。

早く、知ってほしい。

それが私のエゴだとしてもーー




Act. 






跡部「…もうすぐ着くが、本当に大丈夫か?」

穂香「はい、大丈夫です。今日のうちにしないといけないことがあるので。」

跡部「ならいいが…無理はするなよ?」

穂香「はい。」


会長はまた気を利かせくれたのだろう。

裏門まで車をまわそうとしてくれた。

優しいなと何度目かわからないけれど、そう思いながら外を見つめる。

そんな時だった。


穂香(あれは…?!)


見間違いではない気がする。

ーーキラキラと風に靡く色素の薄い茶色い髪。

ラケットバッグを背負い、正門から学園を後にしようとするその姿は、私の知っている人…

私の、今会いたい人に見えた。


穂香「か、会長!おろしてください!」

跡部「止まれ!ドアを開けろ!」


そういうと車は会長の指示通りに止まり、ドアを開けてくれた。


跡部「どうした藤咲。」


穂香「ごめんなさい!どうしても話をしたい人がいて!理由は今度改めてお話します!」


私はそういうと、痛む右肩を庇うように車を降りた。


穂香「今日は本当にありがとうございました!また改めてお礼に伺います!」


そして、私は駆け寄っていった…

ーーそう、日吉くんの元へ。





side跡部


跡部「ミカエル。俺様も此処で降りるとする。助かったぜ。」


車から降り、走り去った藤咲の先には見慣れたシルエット。


跡部「ほぅ…そういう訳ね。」


藤咲がやらなければならない事。

それはアイツと話す為だったのか。


跡部「フンッ…面白いじゃねーの。」


生憎、話を盗み聞く程悪い趣味はしてねぇからな。

その足でテニスコートに向かうことにした。


いつか、藤咲が報われるようにーー…

らしくもなく、そう願って。







 
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