*白雪姫

□第10.5話
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第10.5話


王子にネックレスをもらった白雪姫が、小人たちにバレないように家に帰っていたころ。


「さてと、こんなもんかな。」


俺は、狩りで仕留めた獲物をもって、空を見上げた。


太陽が真上にあって眩しい。


さ、早いとこ帰ってお昼食べて、また夕方から仕事せな。


そして、俺は森の中を家路に向かって歩き出した。


そのとき、


「忍足じゃねぇか。」


と遠くの方から声がして、周りを見回してみると白馬に乗りながら跡部が近づいてきた。


「跡部やん!久しぶりやなぁ。」


跡部は隣の国の王子様で、実は俺とは幼なじみ。


え、なんで王子様と幼なじみなのかって?


俺は、元は隣の国に住んでいた。


父親が跡部の城の兵隊長をやっていて、跡部とは歳が同じということで、よく遊んでたんやけど…


俺が国を飛び出してからはあんまり会わんようになったなぁ。


「お前、まだ狩人なんてやってんのか?」


跡部が俺の持ってる獲物を見て怪訝そうに言った。


「ええやろ、別に。」


「城の兵士に雇ってやるって言ってるじゃねぇか。」


「せやかて、城の兵士なんかになったら、自由な時間がなくなるやろ!」


「…ったく、物好きなヤツ。」


跡部はそう言った後、何かを思い出したようにクスっと笑った。


「なにがおかしいねん?」


「いや、実はさっきまでおもしろい女に会っててな。あいつも変なこと言ってたなぁと思ってよ。」


え、今跡部なんて言ったん?


「お、女?」


「あぁ、あんなに嘘が下手な女なんて初めてだぜ。女は嘘が上手いというが。」


ちょっと、待った!


嬉しそうに女の話してる跡部を初めて見たんやけど。


「そんなにいい女なん?」


俺がそう聞くと


「あぁ。」


と即答。


…まさかとは思うけど


「好きなんか?」


すると、跡部は少し考えたのち


「そうかもな」


なんて言ってきた。


これはあかん!


「お前、白雪姫と婚約してるんやろ?」


それは小さい頃から決まっていたことで


隣国同士が団結を深めるために交わされた約束。


「親が勝手に決めたことだろ。大体、会ったこともない女と結婚できるかよ。」


…確かに、跡部が言うことにも一理あるけど


「あのな、姫さんは可愛すぎてお前には勿体ないくらいやで!」


森の中で会ったとき、俺は一瞬で心を奪われた。


あんなに可愛くて、誠実そうな子見たことないしなぁ。


そんな子と結婚できるなんて、羨ましい限りやっちゅーのに。








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