*Short
□飛んでった麦わら帽子
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私はバスから降りて、空を見上げると、青い空に真夏の太陽が眩しく輝いていた。
……暑い。
でも山の中にいる分、少しはましか。
私は、はぁ、とため息をついて、かぶっている麦わら帽子を深くかぶり直した。
今は夏休み。
私がマネージャーをしている氷帝学園男子テニス部は、部長の跡部の別荘にテニス合宿をしにきた。
…ちなみに、跡部は私の彼氏だったりする。
部員のみんなにとって、それは周知の事実だ。
でも、私たちは部活中はちゃんと『部長』と『マネージャー』という立場で接している。
公私はわきまえなきゃ。
だから、部活中は跡部も私を特別扱いしたりしないし、もちろん私も。
今だって、私たちはバスから降りて、跡部の別荘までの少しの距離を荷物を持って歩いているが、跡部は私のことなんかお構いなしだ。
一人で先頭をきってどんどん先に進んでいく。
「やっぱり、夏はどこも暑いんだな。」
「そうですね。これからお昼にかけて、もっと気温は上がりますし…」
「うわー、考えるだけで嫌だな。」
向日と鳳と宍戸が暑さに顔を歪めながら、荷物を持って、私の前を歩く。
「なまえも体調には充分気をつけや。」
私の横を歩いている忍足が、私の帽子をぽんと撫でた。
「これ、部活のために買うたん?」
「あ、うん。夏だし、外で活動するスポーツだから帽子欲しいなって思って、一昨日買ったんだ。」
「麦わら帽子って、テニスとはミスマッチじゃないですか?」
後ろを歩いていた日吉が言ってきた。
……それは確かに、買うとき悩んだけど。
「別に私はスポーツする側じゃないし…それに、これ、一目惚れだったの。かわいいでしょ!」
「えぇ、帽子はかわいいです。」
そう言う日吉は、相変わらず可愛くない。
そんなこんなで、私たちは小高い丘の上の別荘に着いた。
「すごく景色がいいですね!」
鳳が、玄関前で周りの景色を見てそう言った。
私も鳳の視線の先を見ると、確かにとてもいい景色だった。
周りには緑が広がっていて、真っ青な空もよく見える。
丘の上だけあって、とても見晴らしがよかった。
うん、合宿、頑張ろう!
少しだけこの夏の日差しも悪くないかなと思えてきて、私はこれから始まる合宿に備えて、気合をいれた。
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