*Short

□君の笑顔
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「日吉、どうした?」


俺は鳳に話しかけられて、はっとした。


「あ、いや……」


着替えるために、止まっていた手を動かす。


「考え事?」


「あぁ。」


「ふーん。」


なんだ、その珍しそうな目は。








この悩みの種は、なまえ。


なまえの笑顔が頭から離れない。


いや、それが俺に向けてくる笑顔ならまだいい。


俺じゃなくて、忍足先輩だとか向日先輩だとか……


なんか見ていてムカついた。







しかも、


「ねぇ、若。みんなも一緒でいいよね?」


なぜか先輩たちと一緒に帰ることになってるし。


俺はそう言ってくるなまえを断れずに、頷いてしまった。


はぁ………


「それでなー!」


「アハハ、本当にー?」


俺は、先輩たちと笑って話してるなまえを、後ろから遠巻きに見てた。


……やっぱダメだ。


俺はそう思い、口を開いた。


「すいません。俺、寄るところがあるのでこのへんで…。」


「え、若……?」


なまえは驚いた顔で俺を見る。


「じゃ、さよなら。」


そして、俺は右に曲がってなまえたちから離れていった。








本当は寄るところなんてない。


ただなまえから離れたかっただけだ。








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