生徒会広報室

□バースデー
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ハーッピーバースデートゥーユー♪ハーッピバースデートゥーユー♪ハーッピバースデーディア…ニュー生徒会♪ハーッピバースデートゥーユー…♪


日本の、とある学園内の一室で行われる誕生会。
もちろん、ニュー生徒会さんと言うへんてこな名前の人の誕生日ではない。
その名の通り、新しい生徒会発足を祝っているのである。

学び舎にある一室にしてはあまりに豪華過ぎる内装。広々とした空間に並べられた調度品の数々も、見るからに高級品と判る物ばかりである。
そんな貴賓室さながらの部屋の中央に据えられたソファーに座るのは、大統領でも石油王でもなく、学生服を来た若い6人の男女。
明らかにミスマッチな6人は、しかし臆する様子もなく、堂々たる居振る舞いで誕生会を進行していく。

「誰が火ぃ消す?」
「やっぱり会長じゃない?」
「そうですわね。何て言っても私達のトップですから」

そうして5人の注目する先には、一際存在感を放つ青年が。誰よりもけだるそうに、不機嫌そうにしている会長は、それでも蝋燭の火を消そうとする。

軽く息を吸って…

ふぅ〜〜〜〜〜

前言は何処へやら。結局6人全員で火を消していた。
なんとも息の合った面々である。

「……俺が消すんじゃなかったのか?」
「よぉく考えたら、ローソクの火ぃ消すトコって1番楽しいでしょぉ♪そしたら吹いてたぁ」
「それに一発で火を消せたらと願いが叶うのよ」
「私は、皆さんと楽しく生徒会を運営出来ますようにと、お願いいたしました」

思わずそうか、と頷きかけて我にかえる。全く理由になっていない。
しかし、すっかり女性陣のペースに巻き込まれた会長に、抗う力はない。

「お前だけにイイトコ渡すかよ」
「生徒会のレッドの地位は誰にも譲らねぇ」
「……全くもって意味がわからん」

心なしか会長の口角が引き攣っている。
勝手に持ち上げておいて、理不尽な理由でそこから蹴落とされたのだから、腹は立つ。
しかし、本当にここで怒っては相当プライドが高いか、短気である。
ここは、ぐっと堪える。

「会長のくせに、察しが悪いなぁ」

ぷちっ。

「会長だからって理由で主役になるのはずるいよなぁ」
「…ほぉ、貴様らに主役が務まると?」
「当然だね。僕に脇役なんて似合わない」
「オレはレッドしかやだかんな」
「俺に敵うとでも…?」
「何だよ?!誰が主役に相応しいか勝負だっ!!」

画して、仁義なき戦いが勃発。
しかし男性陣が火花を飛ばす中、一方の女性陣はというと、何とも優雅なものだった。

「主役を争ってって……ホント男ってああ言うの好きよね」
「ねぇー。何か面倒だし皆が主役でいいのにねぇ」
「あっ、それ凄いイイじゃない!」
「では、そういう事にしちゃいましょうか」

何ともあっさりと問題解決。

「ねぇ、皆ぁこの話しもぅ終わったよぉ。…って全然聞いてなぁい」
「ほっとこ。好きにやらしとけばいいのよ」
「先にケーキ食べてしまいません?」
「「賛成〜〜」」

話しが終わってしまったことを知ってか知らずか、男性陣の争いは続いている。

「主役が馬鹿では話にならん。知力で決める」
「何を言ってるんだか。主役は誰からも愛される存在でないと。つまり僕だよ」
「…めちゃめちゃナルシストだな…。
とにかく、勝負と言えばスポーツに決まってるだろ」

当然と言えば当然で、3人とも得意分野で戦おうとする。
決着する様子は全くない。
しかし、話はある一言によって急展開を迎える。

「二人に情熱があるのか?!」
「「はっ???」」

不意を付かれ論争を止める二人。
握りこぶしの発言者を見るその顔には、突然何を言い出すんだこの馬鹿は、と書いてある。

「主役のレッドはなぁ!レッドは誰よりも熱くて、仲間の為にいつもボロボロになるまで頑張って、絶対見返りなんか望まないで何でも笑顔で受け入れるし、いつだって仲間と一緒に一喜一憂して…愛嬌もあるけど、時には仲間の為に本気で怒ったりして、強くてカッコイくて、最後まで諦めなくて………以下略」

特撮ヒーローの主役について、延々講釈を垂れられた二人は、心境に変化が起きた。

「レッドにはなりたくないね。忘れていたよ、特撮ヒーローにはブルーがいただろう?二枚目の僕にはピッタリだ」
「貴様と同じ意見なのが気に入らないが、俺もレッドは断固拒否する。俺は隊員を使役する司令官でいい」

自らを特撮モノの役に当て嵌めるあたり、早くも洗脳されかかっている。恐るべし、特撮ヒーロー。

「二人ともレッドの偉大さに頭が上がらないって感じだな♪オレがレッドだ!文句ないよな?」
「好きにしろ」
「喜んで」

こうして遂に終戦を迎えた。実に呆気ない、拍子抜けのする最後であったとしても、
女性陣がすでに別の答えを導き出していたとしても、争いは終わったのだ。

「みんなっ、今日からオレがレッドで主役だ。よろしく!」
「何で、あんたが主役なのよ?みんなで主役って、もう決まってるのよ。勝手に決めないで」
「何だよ、それ……って、あ〜〜〜〜っ!!オレのケーキがないっっっ!!!!」
「うるさいなぁ。耳元で大声出さないでよぉ」
「さぁ今からケーキを食べますよって時にいなくなる方が悪いのよ」
「普通、残しとくだろっ!」
「そんなこと誰が決めたのよ」
「けち〜!悪魔〜!鬼〜!!」
「はぁ?!喧嘩売ってんの?!喜んで買うわよ!!」

再び、戦いが勃発。
かと思いきや…

「ここは幼稚園か!ケーキぐらいで騒ぐな!また買えばいいことだろう。
遊びはもう終わりだ。それより、今やるべきは掃除だ。仕事は山の様にあるんだ。こんな散らかった部屋では出来ん」

「「「え〜〜っっっ!」」」
「つまんなぁい」
「まだケーキ食べたばっかじゃんか」
「確かに遊び足りないですわね」

大ブーイング。

「文句を言うなっ!お前ら、生徒会役員だろ。人の上に立つものとしての自覚が足りん」
「堅い。堅いよ、会長」
「オレ、ケーキまだ食べてない」

本日二回目の、ぷちっ。

「お前らも、主役になりたいなら、人の見本となるような行動をしろっ!!」

プライドは高く短気であるかもしれないが、この青年、6人の中で唯一良識を持つ人物なのかもしれない。

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