星が無造作に散りばめられた暗く寒い冬の夜。
「……今日は、冷えるな」
いつものように書類整理と帰宅前の校舎の巡回を終え施錠した僕は空を見上げ何気無しに呟いた。
息が純白に零れてしまう程の極寒状態のまま帰ったらまず何をしようかなんて考えていた僕だったのだけれど。
「うわぁ、雪だぁ〜!」
そんな気の抜けたような女子の声に思考回路を遮断された僕は目の前の校庭へと視線を向けた。
そして視線を向けた、そこには。
「…… 」
背筋をピン、と伸ばし自らの片手を空高く掲げる の姿。
いつの間にか、はらはらと舞い落ちて来た冷たい雪に瞳を奪われている はとても綺麗で。
正直な話、僅かな間だったけれど僕は彼女に胸を高鳴らせた。
そんな胸の高鳴りをごまかすように一歩一歩彼女に近づいた僕は、未だに僕の気配に気づかず雪に見とれている に声をかけた。
「 」
「え……あ!雲雀さん」
呼び掛けて見れば案外、気づくのには早いもので は直ぐさま振り向いて普段のにこにことした、笑顔を僕に向けた。
「キミ……こんなに夜遅くまで、何してたの」
「雲雀さんを待ってたんです」
「…………」
幾分、苛立った声で言ったつもりが、どうやら彼女には効果がないらしく はヘラリと言った様子で微笑みを向けてきた。
いくら僕が秩序を守っている並盛とはいえ夜に女子が一人で居たら危ないと思うんだけど。
このコは、どうして、そういった危機管理能力が低いんだろうか。
「だから沢田やら、その取り巻きやらに狙われるんだよ」
「へ?何か言いました?」
ワオ、自覚無しかい?
思わず溜息が漏れるよ。
まぁ、いいか。
「ねぇ、 」
「はい、なんですか?」
「キミは僕が護るから」
――だから。
「だから僕の傍で笑っていなよ」
ずっと、ね。
そう の髪に指を絡ませていえば一瞬きょとんとしながらも直後にキミは、ありがとうございますと穏やかに微笑んだ。
そんなキミが愛しくて。
「帰ろう、今日は冷えるから、家まで送って行くよ」
そういう僕にキミは「はい」と、返事を返す。
そして僕に言うんだ。
「ねぇ、雲雀さん」
私、雪も大好きですけど。
「雲雀さんの方が、もっともっと大好きです」
そう微笑んで。
そんな彼女に、
「――知ってるよ」
そう口にした僕は。
愛しい彼女にキスをした。
(無自覚で天然で無自覚で可愛い反則なキミは常に僕の心を捕らえて離さない)
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