儚く散りゆく記憶

□宣告セレナーデ
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「好きだ」


「ごめん」


真剣な、切羽詰まったような表情で想いを告げてくる山本の想いを私は躊躇いながらも断った。



「何でだよ……っ!まだ、アイツが忘れられねーってのかよ!?」


「……うん」


「……マジ、かよ……」



やりきれなそうに悔しそうに頭をガシガシと掻きながら苛立った、様子の山本。


実は山本が私に告白し私が山本を振るという悲惨な光景。


今更ではあるが、この光景はココ最近一度や二度ではなく頻繁に見られる光景となっていた。


ちなみに私が彼を振る理由となる『アイツ』とは私の恋人だった筈の六道骸が原因だったり。



「アイツと連絡取れなくなって、もう数年だろ!?今更、義理立てする事なんか無ぇんじゃねーのか?忘れろよ」


「……忘れる?」


「ああ……!」



いつもだったら振られると同時に、しつこくはせず諦める山本。


だが今日は違った。


あろう事か彼は未だ骸の事を愛し想いつづける私に彼の事は忘れろと言う。



「俺が傍に居る!俺ならお前から離れたりしない、不安にさせたりもしない!!ずっと傍に居る!」



私の両肩を掴み真剣に、本当に、真剣な瞳で訴えかけてくる山本。


彼なら本当に、そうするだろう。


彼なら、彼となら、きっと本当に幸せになれるのかもしれない。




――だけど。




「……無理、よ」




離して、そう片手で彼の大きな手を振り払う様にして私は口を開く。



「貴方となら幸せになれるでしょうね、だけど私は無理。だって私が愛してるのは骸だけであって、貴方は決して彼の代わりにはなれないのだから」


「……なっ!?」



残酷な事を言っているのは解っている。


最低な事を言っているのは解っている。



けれど、それでも。




「私が愛してるのは骸だけよ」




誰も彼の代わりになどなれないし、ならせたくもない。




「……ごめんね、山本」




彼への気持ちを、ごまかして誰かのものになるなど私には考える事が出来ないわ。



だから、ごめんね。




「私に貴方は要らない」


「…………ッ!!」




そう冷たい瞳で言い放つ私に彼が酷く傷ついた表情を浮かべるけれど私には、どうする事も、どうしてあげる事も出来はしなかった。



「……骸」




ああ、貴方は何処へと行ったの。




宣告セレナーデ
(この想いを犠牲にしてまで、得たいモノなど私には無かった)




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