心霊探偵八雲
□マッサージ(仮)
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講義を終えた小沢晴香は、B棟の裏手にあるプレハブの建物に向かっていた。
友人である斎藤八雲に会いに行くためだ。
一階の一番奥「映画研究同好会」のプレートのかかった部屋に八雲は住んでいる。
大げさに言っているわけではない。
映画研究同好会なんて真っ赤な嘘。
大学側を騙して、このプレハブの建物を自分の部屋にして生活している。
「やあ」
晴香は言いながらドアを開ける。
「また君か」
相変わらず寝癖だらけの髪に、眠そうな目。
正面の椅子にふんぞり返って、面倒臭そうに八雲が言った。
「言っておくけど、
ここは暇潰しの場所ではないんだ」
「八雲君が思ってるほど、私は暇じゃないの。
バイトあるし、色々誘われたりもするし、レポートやらなきゃいけないし、今日はそのレポートをしにきたの」
「ここは僕の部屋だ。レポートは自分の家でやってくれ」
せっかく会いにきてもこの皮肉だ。
「はいはい」
晴香は、軽く受け流しながら八雲の向かいの椅子に腰を下ろした。