○オーナーと一緒シリーズ

□名前を呼んで。
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『俺の名前、解るか?』


『………』


『ほら、さっき謂えたろ?』


『モ、ト…』


『そう!もうちょい!』


『モトチカァー』


『よっしゃ!謂えた!!!ね!元就さん、聞いたでしょ?!』






何て謂うか、遣り遂げた!って謂う気持で一杯で
嬉しくて嬉しくて、元就さんを振り返って訪ねれば、元就さんの眉間に皺一本
うお、顔怖ェ






『あの…元、就さん…?』


『其れだけか?』


『へ?』


『我の仕事を邪魔してまで見せたかったと謂うのは、此れの事だったのかと聞いておる』


『あ、はァ…そうっスけど…』


『下らぬ。長曾我部、罰を与えるぞ。今直ぐ、貴様一人で入荷品のチェックをして参れ』


『ちょ…そりゃ無いっスよ!』


『ほう、我に口答えをするか』


『喜んでやらせて頂きます』






そんなこんなで、結局俺は、此の膨大な量の商品チェックを命じられたって訳で
本当、何箱ダンボールが詰まれてんだってくらい
畜生、こんなの理不尽だ

元々、元就さんだって頑張れって謂ったんだからさ
オウムが俺の名前呼んだ時くらい、良かったな、って謂ってくれても良いじゃねェかよ
そりゃ確かに、仕事邪魔しちまったのは悪いと思ってるけど、だからってこんな仕事押し付けなくても良いじゃねェか







( 罰として手伝え、くらいだったら、こんなに苛々しねェのに )







そんな事を思いつつ、半ばやっつけ仕事で商品のチェックをしていたら
何やら、店内からボソボソと声が聞こえて来るのに気が付いた
元就さんが電話でもしてんのかと思って、そっと倉庫の扉を開けて、店内を盗み見る











『我が名は毛利元就、謂ってみよ』


『モトチカ!』


『元親では無い。元就だと謂っておるだろう』


『モトチー』


『其方、我が此の店に迎えて遣ったのを忘れたか。本来ならば、我の名を先に呼ぶのが礼儀と謂うものだ』


『モトチカァー』


『……其方、好い加減に我の名を覚えよ。誰が其方の世話をしてやっていると思っておる』














声を殺して笑うのが、こんなに苦しいなんて思わなかった
取り合えず、携帯のムービーで撮った此の遣り取りは、専用ボックスでも作って保存しておこう






あー…腹痛ェ。
死ぬ。息出来ねェ。
苛々なんて吹っ飛んじまったじゃねェか、畜生














元就さんが不機嫌だったのは、ただ拗ねてただけでした。







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