○オーナーと一緒シリーズ
□勘違い
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『はい、って…え?!』
『今日はもう、帰って良い、と謂ったのだ』
『え、でも仕事…!』
『馬鹿者めが、貴様が居らずとも我一人で十分よ』
『否、其れにしたって…』
『オーナー命令が聞けぬとは謂わせぬぞ』
『…そう、ですけど…』
『祝いたい者が居るのだろう。少しでも長く、祝ってやるが良い』
そう、謂ってくれて
持って居た紙袋を俺に差し出した
『持って行くが良い。受け取らねば貴様はクビだ』
何だかもう、優しいんだか怖ェんだか解んねェ人だ
でも、何つーか、すっげェ嬉しくって
有り難く、受け取る事にした
『あの、有難う御座います!』
『ふん、其の分貴様には働いて貰うぞ』
『はい!』
早く行け、と謂う元就さんの声を背に受けて、そそくさとスタッフルームに引っ込む
本当は此の時間帯、兄貴は仕事中だから家には居ないんだけど、其れでも元就さんの優しさに素直に甘えて
家に帰ったら、兄貴の為に甘さ控えめなケーキでも作ってやろうと思いながら、そそくさと着替えて
もう一度、元就さんに礼を謂ってから店を後にした
『其れにしても、元就さん何くれたんだ?』
ケーキの準備も、レストランに行く為の身支度も全部終えて
兄貴が帰ってくるのを待っている間、リビングのテーブルに置いておいた紙袋が妙に気に成ったモンだから
兄貴には悪ィとは思いつつ、そっと中を盗み見た
中には、俺宛に小さなメモ用紙
元就さんの流麗な字で【茶色の毛ならば、明るい色の方が目立って良い】って書いてあって
其れと、綺麗な水色の猫用首輪が一つ
ご丁寧に、首輪には【MASAMUNE】と謂うチャーム迄付いていて(自分でスペルを付けて、名前とか好きな文字に作るアレな)
嗚呼、元就さん此れ作ってたんだ、って
薄暗い倉庫の中で、せっせとスペルを繋げて行く元就さんの姿を想像して、一人爆笑
猫用首輪なのは、多分俺が、前に元就さんに猫が好きって謂ってたからだろうな
身内ってのも、ペットの事だと思ったのだろうか
( いやァ、其れにしても… )
好い加減
政宗ってのは俺の兄貴だって事を覚えて貰おうと思った。