●小話

□指先
1ページ/2ページ




身体に、力が入ら無い
後頭部が、じくじくと熱に侵食される様な感覚に襲われて
胎内を満たす圧迫感に、腰が跳ねる
手首を一括りにして居る麻縄が食い込んで、擦り切れた皮膚にじわりと血が滲み
冷たい指先で首筋をなぞられて、情け無い事に背が震えた



息が、出来無い。






声を出さ無い様にと、唇を噛み締めて耐えれば
ヒュ、と風を切ったしなやかな手で、頬を張られる
如何しようも無い快楽から逃れたくて、身体を捩れば
細い指が、喉に食い込んだ







『愚か者めが、我から逃れられるとでも思って居るのか』







冷たい、抑揚の無い声で囁かれて
ぎり、と喉に食い込んだ細い指に力が込められる
思い掛け無い力に咳き込めば、首筋に歯を立てられて強く噛まれた








『ぐ、ぅ、あ、ァ…ッ!!』



『……鬼と謂えども、所詮は人間よ。快楽には、弱いらしいな』



『ァ、うあ、ァ…あァ…ッ』







歯を立てられた箇所を、ねっとりと舌で舐め上げられて
閉じる事も儘成らなくなっちまった口から、耳を塞ぎたく成る様な程の声が漏れる







嗚呼、畜生
本当に、本当に情け無ェ







そんな俺を、至極愉しそうに
其れで居て、蔑む様に追い詰める此の男
わざとらしく、もどかしい程の刺激を与えられて







脳が、溶ける








次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ