replicant.

□Mind.
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ふわふわと浮いている。


見渡せば、無明の暗闇。


――此処は…何処だ…?


昨夜急襲されて…。


……そうだ…オレは撃たれたんだったな。


なら此処は天国か?


いや…地獄か。


能力者は地獄行きだと聞いた事がある。


だが、遠くに小さな明かりが見える。


地獄にも光なんて物があるんだな。


ぼんやりと虚ろな頭は一瞬そう考えてしまった。

……違う。


直感。
そうとしか言えない物によって、考えずとも分かった。


それが、何なのか。






『ほら、坊っちゃん』

鼓膜を掠め取る様な不快な声。

かつ聞き覚えのある声色。

『大丈夫、痛くないですから』

ずっしりと圧し掛かってくる、その声の主。

鈍い金属音。

『目をつむってればすぐです』

狂気に揺れるその眼。

幼いながらに恐怖を覚えた。

『やめ…っ…』

小さなオレに突き付けられる銃。

俗に言うフリントロック式。


この後、あいつが邪魔してくれたお陰で、頬を掠めたマズルフラッシュで火傷しただけで済んだ。


そして、この召使は解雇された。


正確には解雇されたのか、殺されたのか、定かじゃない。


…そう。

これはオレの記憶。





此処は、天国でも地獄でも無い。


紛れも無く、夢の中。

























「…い、起きろ」


聞き慣れた声が、オレを呼ぶ。







嗚呼…オレはまだ、生きている。
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