replicant.

□Crimson.
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暗い闇を彷徨う、小さな子供。



高級な服を泥と血に染めて。



生臭い路地の出口を目指して。



『はぁ…っ…はぁっ…』



呼吸を荒げて走る。



それは、紛れも無くオレ自身。



オレの忌わしき過去。



『っ…!!』



追い掛けて来る“何か”に怯えて、闇を駆ける。



これが過去の夢だとしても。



幾度と無く目を覚まそうとしても。



終わるまで目を逸らすことは出来無い。



「逃げたって無駄だ…
いい加減止めとけ」



子供のオレに向かって小さく呟いてみる。



届かないと知っていても。



『離せっ…!!』



足掻いても無駄。



逃げても無駄。



何をしても無駄だった。



『助けて、ねぇ!!!』



「誰も助けてくれねぇよ
あいつも…誰もがオレを見捨てた」



オレに向かって手を伸ばして来る。



その手は掴まない、掴めない。



所詮は過去の幻影。



「待ってるのは、絶望だけだ」



最後に見たのは、“アカ”



どんな“アカ”だったのか。



今となっては思い出せない。



そして“何か”に連れて行かれる小さなオレに、別れの言葉を告げた。
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