【10000打リクエスト】

□過剰反応
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今日もいい天気。
絶好の航海日和。

「よっ…」

メインマストを広げる。
開いたと思った、その瞬間。

「ッ…!!」

べちん、鈍い音と共にロープがおれの頬を打った。
頬を摩りながら、きちんとマストを張る。
痕、残らなきゃ良いけどな…。

――どどどどどどど…!!

張り終わったおれの耳に入って来たのは、妙な音。

「ん?」
「キャスケット!!」

音の主はペンギン。
しかもそれが足音だったから驚いた。
いつもは物静かなペンギンがあんなデカイ足音立ててるから一大事だと思った。

「…ペンギン!?」

でも、それは違って。
ペンギンはロープの痕が残る、おれのほっぺたに手を当てる。
そう思った刹那。

「誰だ!キャスケットにこんな仕事をさせた奴は…!」

見てるとこ違っ。

「なぁ、ペンギン…?
マスト張りとか、当たり前だと思うんだけど?」
「誰だ…!出てこい!」

聞いてないし…。
とりあえず、離してくれ…首が、絞まる…。

「キャスにマスト張りを頼んだのはオレだ」

騒ぎを聞きつけて、キャプテンが船長室から出てきた。

「キャプテン!」

これで事が穏便に済みそうだと思ったおれが馬鹿だった…。

「…例え船長といえども許せる事と許せない事がある」

ペンギンがおれから離れて、キャプテンと向き合う。
……正直、怖い。
殺気が…ってかものすっごい稲妻が見える。

「“オレの”キャスケットだ、何を頼んでもいいだろ?」
「ちょっと待て、誰のキャスケットだって?」
「“オレの”と言ったんだ」
「それは間違っている、“おれの”キャスケットだ」

やべぇ。
何なんだ、この二人の会話。
おれはいつの間に誰かの所有物になったんだ?
なった覚えもないし、された覚えもないんだけど…今否定したらフルボッコにされそうな気がする。

「あ、あの…」
「「あァ!?」」
「え、あ、…何でもない、です…」

気がする、じゃ済まなかった。
ものすっごい勢いで睨まれた。
正直、勝てる気がしない。

ペンギンは過保護で、キャプテンは独占欲が強くて…。

今なら、サンドイッチの中身の気分がよく分かる。
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