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□感染、発症、侵蝕
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最初の感情は憧れ。
次に抱いたのは恐怖…否。
病に感染したかの様な感覚。
蝕まれる感覚。


そしてあの日、オレは出奔した。
自由が欲しかった。
欲しい物は何でも手に入ったが、自由は買えなかった。
あの男がそうさせなかった。
……ドンキホーテ・ドフラミンゴ。
奴に全てを蝕まれる。
それが怖かった。

オレは奴の目の付かない所まで逃げた。
だが、逃げ切れない事は明白。
それでも少しでも自分の意思を突き通したかった。

「はぁ…はぁ…」

体力の限界だ。
もう逃げ切る自信も、戦う余力も無い。
だったら死んでしまおうか。
そう思った時だった。

「何やってんだ、人の船の前で」
「てめ…は…」

ユースタス・キッド。
噂は聞いている。
勿論、良い噂じゃ無いが。

「何だ?俺に用事か?」
「…っ…た、す…」


傷だらけのオレはそこで意識を失った。


これがオレとユースタス屋の出会い。


きぃ、かたん。

「おい、キッド」
「…何だ」

きぃ、かたん。

「何の為にこんな男を拾って来た」
「良いだろうが」

きぃ、かたん。

「ここでは俺が絶対だ」
「……そうだな」

軋む様な音。
何の音だ…?

「っ…」
「目が覚めたか?」
「…こ、こは…」
「俺の船だ
てめぇ、あの後気絶しちまいやがるから仕方なく連れて来てやった」

丁寧に傷の手当てまでされている。
助けられたのか。
さっきの口論は部下としていた様だ。
軋む音は…波に揺れる船の音。

「…そう、か…
すぐに出て行く…」
「ゆっくりしてきゃ良いだろうが
取って食いやしねぇよ」

一目惚れだった。


これがオレの恋の始まり。


「で…てめぇはどうしてそんな怪我を負ってんだ?」
「…これは…」

言えなかった。
オレがドフラミンゴの船にいた事。
出奔した事。
狙われている事。

「…言いたくないなら無理に聞かねぇ
ただな、俺はてめぇの味方だ」
「ありがとう…ユースタス屋…」

お前に抱き締められた温もり。
今も覚えている。
一生忘れられないその言葉。
一緒に食べた飯。
自由。
その言葉が相応しかった。


その時、一発の砲弾がオレの恋の終わりを告げる。

ドフラミンゴがオレに、追いついた。

「少しお痛が過ぎたなァ、ロー」

オレは、再び暗い世界に引き戻された。

――病の巣窟へと。
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