*:*:* ANGEN *:*:*


凶器
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「あの…ですねぇ…安元さん?」

「洋貴。」

「え?」

「安元じゃなくて洋貴。」

「じゃぁ…洋貴さん。」

「何だ?」

「そんなにくっつかないでくれますか?」


私の言葉に口を開けて時を止める安元さん…基、洋貴さん。

まだ付き合い初めて間がない私はこういう距離は物凄く困る。

洋貴さんは全く気に止めてないようにギンコ同様のスキンシップだと言い、2人きりの時は毎回私を抱き締めている。


「触れられるの、嫌?」


正気に戻った洋貴さんからの問い。

嫌じゃないけど困るんですよ!


「お願いだから離れて下さいませんか?」

「嫌なんだ。」

「違いますけど離れて下さい。」

「ちゃんと理由を聞くまでは離れない。」


洋貴さんの腕がより力強く私を抱き締める

スキンシップ自体は嫌いじゃないんだけど…


「その距離で喋られると困るんです。」

「何が?」

「色々と。」

「だから具体的に。」


ね?そうやっていつも後ろから抱き締めて、肩に顔を乗せて喋るから


必然的に洋貴さんの口と私の耳は近くなって


「声が、困るんです。」

「え…俺の声嫌いなの?」


だから…!


「好きだから困るんです。」

「好きだったらいいんじゃないの?」


いい加減気付いて欲しい

私は赤くなったり、表情がコロコロ変わるような可愛らしい性格も体質もしてないけれども。


「私を殺す気ですか?」

「そんな事言われても。これ地声だし。」


わかってますとも。

作った声じゃないそのままの洋貴さんの声が好きなんだし。

はぁ、と溜め息を一つつくと、洋貴さんはふっとよくわからない息をついて


「うっそ。ホントは何で嫌がるかわかってる。」


なんて。作った声じゃないけどいつもより低めのトーンで仰って。

幾ら何でもこの私でも体は硬直しますって。


「もっと俺に溺れて?」

「いやああああああああああああああ!」







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