SITENHOJI

□世界一愛しい人へ世界一嫌いな言葉を
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後ろを振り向くのが怖い。




謙也さんが俺のことをどんな目で見ているのか知ることが嫌でたまらない




俺は拳を作り強く握った。




もうこの手で謙也さんを抱きしめてやることもできない




“好き”なんて言葉も囁いてやることもできない。




あの時、耳元で「やっぱり別れてやらん」なんて言っていたならまだ謙也さんは俺の隣にいたんだろうか




ごめんなさい。




自分勝手な後輩で。




視界が歪んでいることに気づいて少しうつむき加減に歩いていると、誰かにぶつかった。




「………っ…」




「ちゃんと別れてきたん?」




「っ!!!」




顔を上げれば満面の笑みが。




「白石、部長…」




俺が今一番会いたくない悪の元凶。




「涙目っちゅーことは別れてきたんやな」




「っ……うるさいわ。黙っとき」




自分の中にこの人に対する憎しみしかない。
殴ってやりたい。気が済むまで




「財前」




「なんすか」




自分でもびっくりするくらいの低い声がでた




「笑ぃ」




「は?」




「ええから。はよぅ笑わんと、お前の大事な謙也を傷つけるで?」



「!!」



にっこり微笑んでやった。
もちろん憎しみを込めて。



「…もうええで」



「……」



あぁムカつく。
イライラする。
この人がなにをしたいかわからへんわ



「せや」



「…なん」



「今日から俺と帰るで」



「なんで部長と帰らなあかんのですか」



「もちろん昼も一緒や」



「………は?なんでそこまで…」



「どっかの誰かさんが俺から逃げないようにするための監視や」



そういうと部長は俺の前から去っていった。




 
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