「なぁ、光ってあのパツキンの先輩とどうゆう関係なん?」
俺がそう問えば目の前で今まさに弁当箱の中にいるタコさんウィンナーをぶっさそうとしている光が少し眉間にシワを寄せて俺を見つめてきた。
「自分、知らへんの?」
「知らんから聞いとるんやろ」
「…あー、まぁ、そやな。転入してきたのこの前やしな」
そこからは少しの沈黙。
光はタコさんウィンナーをぶっさしてから自分の口に運んでもぐもぐ食べていた。
その一方、俺はそんな光の様子を眺めてるだけ。
なんやねん、なにか言いづらいことでもあるんやろか。
「……恋人、やで」
「…はい?」
いきなり口を開いたかと思えば信じられない言葉を耳にした気がして思わず聞き返してしもた。
「せやから、そのパツキンの先輩と付き合うてる」
「…ほんまに?」
「ほんまや」
「へー…」
別に俺はこういう事に偏見はあらへんけど、結構女の子に呼び出されては告白されとるこいつがそのパツキンの先輩と付き合うとるのが不思議や。
「…なんなら詳しく話たろか?」
光はからになった弁当箱の蓋を閉じながら俺に聞いてきた。
なんや、自分のことをめったに話さない光がこんなことを言うのはごっつめずらしい。
今日はひどく機嫌がええんやろか
「ただし、購買にあるぜんざい奢ってくれたらやけど」
…あぁ、うん。
そういえば今日限定で購買にぜんざいが売っとるんやっけ。
せやから機嫌よかったんやな。
「今日だけやからな?」
「おおきに」
光は嬉しそうに俺に向かって笑いかけてきた。
(不覚にもかわええと思ったのは秘密や)
「ほな、はよ行くで」
「おー」
俺は片手に財布を持って、
光は携帯をポッケに入れて、
二人で購買に向かった。
「そういえば、」
「なん?」
「あのパツキンの名前は忍足謙也っちゅーねん」
「忍足謙也?」
「おん。ま、おぼえときや」
教室を出てすぐに光はあのパツキン先輩の名前を教えてくれた。
忍足先輩、とでも呼べばいいだろうか。
「じゃあ最初は仲良くなった頃の話でもしよか?」
「なんでもええで。光が話しやすいところから話し?」
「せやな。じゃあ適当に話していくわ」
元々な俺は謙也さんなん興味なかったんや、
光はそう話し始めた。