SITENHOJI
□15文字以内で
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たまには俺もボケてみることにした。
「謙也さん」
「ん?光やん。どないしたん?」
「俺への想いを15文字以内で答えてください」
「んー……15文字……?」
持っていたラケットを脇に抱えて、眉間に皺を寄せながら両手を使って指を折りながら数える姿がなんともおかしくて、必死に笑いを堪えながら謙也さんが口を開くの待った。
「あ、」
「思い付きました?」
「“どんなひかるもおれはすきやで”で、どないや?」
「…それ14文字やないっすか」
「じゃ、じゃあ最後にビックリマークでもつけといてや…ちゅーか15文字以内なんやから14文字でもええんちゃう!?」
「ま、そっすけど…」
「でも俺言葉よりも態度で示す派やからなぁ…」
「態度?」
若干意味がわからないなんて顔をしながら謙也さんを見ればそんな俺の顔をみて謙也さんはニッコリ微笑んで、ぎゅっと抱きついてきた。
「ほら、こっちの方が気持ち伝わりそうやん?」
「な、なな、いきなしなんやねん!」
謙也さんの腕の中でどんだけ暴れたって結局体格差があるから俺の抵抗は虚しくも意味がなくて、仕方がないから大人しく抱きつかれてることにした。
「ほんまないっすわ…部活前に抱きつくやつがどこにおんねん…」
「ここに居るやん。それに光が変なこと聞くから悪いんやでー!」
表情は見えないけどたぶん謙也さんのことだから幸せそうに笑ってるんだろうな、なんて思ってると
「自分らなにしとるん?」
白石部長が邪魔しにきた。
「なにって抱きついとるだけやで?」
「部活前にいちゃつくなや。謙也限定でムカつくわ」
「なんで俺だけやねん!」
「ほら、財前。俺のとこに来ぃ?」
「嫌っすわ」
「なんでやねん」
「光は俺の方がええんやて!」
「そういうわけちゃいますけど」
「え…」
「あはははは、残念やったなぁ謙也ぁ!とりあえず財前から離れろや」
白石部長の言葉がだんだん悪役が言うようなやつばっかりになってきてるな、なんて思いながら謙也さんにした質問を今度は白石部長にしてみようと思った。
「部長」
「なんや?」
「俺への想いを15文字以内で答えてください」
「15文字?」
「はい」
「んー…“食べちゃいたいくらいだい「やっぱ1文字以内でお願いしますわ」
「ぷ、言い切れなくて残念やったなぁ白石!」
「くそ、謙也お前今日性格悪いで!?」
「気のせいとちゃう?」
「それも一文字以内って…財前鬼畜や…」
「人聞き悪いこと言わんでください」
「もういい!俺泣いちゃうからな!」
「どーぞ泣いてください」
「……っ!財前酷い…」
「やっぱ光は俺のほうがええんやな」
「いや誰もんなこと言うてないっすわ」
「元はと言えば謙也が悪いんやで!?」
「なんで俺やねん!」
「財前に抱きついとったのが悪いんや!」
「それ全く関係ないやん!」
いつもよりも惨めな白石部長といつもよりも余裕ぶってた謙也さんを置いて俺はそこらへんで生気がまるでないんじゃないかと思うくらい元気がないユウジ先輩を捕まえて(たぶん小春先輩がまだ来とらんからやな)、コートまで引きずってった。
「光、なんやねん」
「小春先輩がくるまで俺の相手してくださいよ」
「…えー…」
「ちょっとくらいええやないですか。ほら打ち合いしますよ」
「……まぁ少しくらい付き合ったるわ」
そういうと今度は逆に俺を引きずり始めたユウジ先輩。
でもそのとき、
「「こぉらぁぁぁああ!光(財前)に触んなやユウジィィィィイ!」」
「!?」
「来よった…」
猛スピードで俺達目掛けて走ってくる白石部長と謙也さんを見てユウジ先輩は俺を置いて逃げてった。
逃げても意味ないのに。思ってても言わないけど。
先輩らのおいかけっこを見ながらたまにはこんなのもいいかもしれない、なんて思った自分に少し自己嫌悪。
次は違う先輩に聞いてみようかな、と思った放課後の部活前の出来事。