SITENHOJI
□らぶれたー
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「光ってあんまり好き言うてくれへんよな」
始まりはその一言からだった。
らぶれたー
いつも通りの夕暮れ、人目を少し気にして手を繋いで。
学校であった話をしながら帰ってるそんな時に謙也さんが何かを思い出したのか急に立ち止まって俯いた。
「……?どないしたんすか?」
「……ひかるって、さ」
「はい?」
「あんまり好き言うてくれへんよな」
言葉の意味を理解するのに13秒くらいかかったかもしれない。
(なんで微妙な数字なのかはただなんとなく)
とりあえず、だ。
どうしていきなりこんなことを言い出したのか理由を聞かなくちゃならないと思った。
「謙也、さん」
「ん…?」
(おそらく)13秒間の沈黙(だったはず)の中終始俯いていた謙也さんの前に立ち、
下から顔を覗きこんだ。
……予想通りというかなんというか。
謙也さんの顔は真っ赤だったが表情が少し寂しげで、まるで捨てられてしまった子犬のようだった。
「いきなりそないなこと聞いてどないしたんすか?」
謙也さんの頬に手を添えて、目線が合うように上を向かせた。
でも目線は合うことはなくて、ずっと逸らされたまま。
少ししょげそうになりながらもじっと見つめていると口を開き、ちいさな声でぼそぼそ話始めた。
「……今日、ふと思ったんや。いっつも好き言うのは俺だけで光から好きって言うてくれへんなって。そしたら不安になって…」
今にも泣き出しそう。
半泣き?
ごめんな、光…。なんて言いながら目に涙を浮かべているから俺は俺よりも10cmほど背が高いその体をきつく抱き締めてあげた。
「……謙也さん」
「…なん…?」
「す、」
「す?」
「す、……」
「……?」
「ああ、あかん!…明日手紙書いてきたりますわ…」
「手紙…?」
「はい」
「……!楽しみにしとるな!」
そう言って謙也さんに出来もしない約束をしたのが今日の夕方のこと。
そして今現在、その約束を果たすために俺は自室の机に向かっていた。