SITENHOJI

□君依存
1ページ/1ページ



好き、大好き、愛してる。



だから部長、



俺と―――…





















依存


















「ねぇ、部長?」




「なん?」




「別れましょ?」




「……え?」




白石部長は今にも泣き出しそうな顔をした。




あぁ、泣かんでくださいよ。




俺も泣きたくなりますやろ。




俺は部長にしか聞こえないような声の大きさで話しかけた。




「…俺、部長の事が好きすぎてたまに殺したくなるんすわ。誰の目にも触れさせたくない。誰にも渡したくない。これって危ないでしょ?殺人の一歩手前。だから…俺がいつか部長に手をかけてまう前に俺と別れてください」




目の前の部長は切な気な顔をした後にうつ向いてしまった。








部長、




どうか俺から逃げてくれへん?




まだ間に合いますから。




俺との仲、なかったことにできるから。




だからはよぅ、俺のこと捨てて。








「…嫌や」




一言、小さく否定の言葉を呟くと部長は顔をあげた。




「……は?」




「なして好きなのに別れなあかんの?」




「なしてって…さっき言うたやないですか。俺は部長の事が好きすぎていつか殺してしまうかもしれへんて。……まさか、冗談やと思うとるんすか?」




「……俺な、お前になら殺されてもええと思うねん」




俺は頭が真っ白になった。




「…アホですか?」




「失礼なやつやな」




なぁ、なしてなん?




なして俺から離れてくれないんすか?



 
「部長、…俺と……別れてください…」




「だから嫌やて」




「じゃあ、俺にもう、」




「なぁ、財前?」




部長は、ひどく優しい声音で俺に聞いた。




「お前、ほんまに俺と別れたいん?」




「………はい」




そんな優しく聞かないで。




しっかり決意してきたはずなのに揺らぎそうになる。




だから、言葉につまった。




「じゃあなして泣いてるん?」




「……え…?」




俺が泣く?




んなわけないでしょ。





ぽたり、





乾いた地面に一粒の水滴が落ちた。




………あれ?






「ほんまは別れたくないんやろ?」




「………」




「俺は財前から離れるつもりはあらへんよ?」




「………っ………」




もうこれ以上俺に関わらないでください。




せっかく、せっかく




部長のこと、手放せると思ったのに。




「ぶ、ちょ……ごめ、なさい……好き、大好き…」




「俺もやで」




そういうと部長は俺を抱き締めてくれた。



「部長のこと、殺しちゃって知りませんからね」




「財前に殺されるなら別にええって」



部長はそういって笑った。













俺はあなたの手を離せるほどまだ強くない。




だから、後少しだけ甘えさせてくれへん?




だけどたぶん、あなたの手を離す事は一生出来へんやろな。




こんな俺はきっと、君依存。




 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ