SITENHOJI
□君依存
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好き、大好き、愛してる。
だから部長、
俺と―――…
君依存
「ねぇ、部長?」
「なん?」
「別れましょ?」
「……え?」
白石部長は今にも泣き出しそうな顔をした。
あぁ、泣かんでくださいよ。
俺も泣きたくなりますやろ。
俺は部長にしか聞こえないような声の大きさで話しかけた。
「…俺、部長の事が好きすぎてたまに殺したくなるんすわ。誰の目にも触れさせたくない。誰にも渡したくない。これって危ないでしょ?殺人の一歩手前。だから…俺がいつか部長に手をかけてまう前に俺と別れてください」
目の前の部長は切な気な顔をした後にうつ向いてしまった。
部長、
どうか俺から逃げてくれへん?
まだ間に合いますから。
俺との仲、なかったことにできるから。
だからはよぅ、俺のこと捨てて。
「…嫌や」
一言、小さく否定の言葉を呟くと部長は顔をあげた。
「……は?」
「なして好きなのに別れなあかんの?」
「なしてって…さっき言うたやないですか。俺は部長の事が好きすぎていつか殺してしまうかもしれへんて。……まさか、冗談やと思うとるんすか?」
「……俺な、お前になら殺されてもええと思うねん」
俺は頭が真っ白になった。
「…アホですか?」
「失礼なやつやな」
なぁ、なしてなん?
なして俺から離れてくれないんすか?
「部長、…俺と……別れてください…」
「だから嫌やて」
「じゃあ、俺にもう、」
「なぁ、財前?」
部長は、ひどく優しい声音で俺に聞いた。
「お前、ほんまに俺と別れたいん?」
「………はい」
そんな優しく聞かないで。
しっかり決意してきたはずなのに揺らぎそうになる。
だから、言葉につまった。
「じゃあなして泣いてるん?」
「……え…?」
俺が泣く?
んなわけないでしょ。
ぽたり、
乾いた地面に一粒の水滴が落ちた。
………あれ?
「ほんまは別れたくないんやろ?」
「………」
「俺は財前から離れるつもりはあらへんよ?」
「………っ………」
もうこれ以上俺に関わらないでください。
せっかく、せっかく
部長のこと、手放せると思ったのに。
「ぶ、ちょ……ごめ、なさい……好き、大好き…」
「俺もやで」
そういうと部長は俺を抱き締めてくれた。
「部長のこと、殺しちゃって知りませんからね」
「財前に殺されるなら別にええって」
部長はそういって笑った。
俺はあなたの手を離せるほどまだ強くない。
だから、後少しだけ甘えさせてくれへん?
だけどたぶん、あなたの手を離す事は一生出来へんやろな。
こんな俺はきっと、君依存。