SITENHOJI

□世界一愛しい人から世界一嫌いな言葉を
1ページ/1ページ




「謙也さん……」



「なしたん?元気ないで光。」



「     」



俺の世界一愛しい人は



俺が世界一嫌いな言葉を呟いた。
















世界一愛しいから世界一嫌いな言葉


















「…………は?」



俺は今日ほど言葉という物を恨んだことはない



どうして言葉というものは
意図も簡単に人を傷つけることができるのだろうか。



「だから聞こえませんでした?」



「いや、聞こえたも何も……」



わかってる。



俺かてそこまでバカやない



言葉の意味だってちゃんと理解してる



「“別れましょ”言うたんや」



「……なして?俺なにか光の気に食わんことしたか?」



昨日もそのまた前の日も一緒に居ったやないか



そんで、一緒に光の好きなぜんざい食べて



一緒に笑ってたやん。



昨日なんて『謙也さん好きです』なんて言うてくれたんに…



なんでや?



俺から一生離れませんからって言うたやないか。



「もう謙也さんのこと嫌いなんすわ。だから俺に金輪際近づかんといてください」



そういうと光は足早に俺のもとを去っていった。








まだ間に合う。



はよぅ追いかけな後悔するで。



なのに俺の足は動かない。



スピードスターが聞いてあきれるわ。



 
柄にもなく怖いねん。



もう俺のことを優しい眼差しで見ようとしないであろう光の冷たい眼が。



もう「謙也さん」と優しそうに呼んでくれないであろう光の声が。



あの時この手で光を強く強く抱き締めてやっていたなら、



なにか変わってたんやろか。



耳元で「別れてやらんで」なんて言っていたなら今も俺のそばに光は居ったんやろか。








ごめんな。



気がきかん先輩で。










俺は遠くを見た。



丁度視界に笑ってる光がいた。



……なんや。



あいつが笑っとるならそれでええ。







上を向いて空を見上げる。



太陽が雲に覆われて急に暗くなった。





あぁ……雨なんて降ってきよった。




 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ