「ひっかるー!!!」
二年生に上がってもうすでに2週間が過ぎた。
部活やって一年生が入ってきてさらに賑やかになっとるし、
「財前先輩」と呼ばれるのもなんだかくすぐったいが嬉しい。
でも謙也さんがごっつうざい。
「光ーっ!!なぁなぁ無視せんといてや!」
「うざいっすわ」
「なっ…!それは俺も傷付くで!」
「はいはい、そっすね」
他の先輩なら挨拶するだけ(でもないけど)で終わるはずなのにどうしてこん人はこんなにベッタベッタ絡んでくるんやろ。
「光ー…」
「ほな、また」
「え、ぇえ?!冷たない!?」
謙也さんの言葉は聞こえないフリをしていつも足早にその場を去る。
そんなこんなで適当にやり過ごしていたある日。
部活が終了して、教室にケータイを忘れてきたのを思い出した俺は制服に着替えもせず、練習着のままケータイを取りにいってさっさと帰ろうと部室の前にきたとき、
「なぁ、謙也って財前のこと好きなんやろ?」
窓が開いているのか部室から白石部長らしき声が聞こえてきた。
「な…っ!いいいきなりなんやねん!」
「やってあからさまに態度に出とるやん、自分」
「で、でてへんわ!!」
「でも好きなんやろ?」
「…まぁ、否定はせぇへんけど…」
…ちょい待ちぃや
そんなん初耳なんやけど。
謙也さんが俺をすき?
男の、俺を?
意味わからへん…。
これ以上この話を聞く気にはなれなくて再び自分の教室に足を運んだ。
できるなら今は謙也さんと顔を合わせたくない。
それから30分後、重たい足を引きずりながらもう一回部室に行って扉を開ければ白石部長しか居らへんかった。
「帰ってくんの遅いで」
「すんません、教室にケータイ忘れたんすわ」
「ずいぶん時間かかったんやな?」
「見当たらなかったんです」
「せやったんか。ほな、はよ着替え?」
そういう部長の顔を見ればニヤニヤしていた。
わかっとるくせにほんま性格悪いわ。
そのあとはさっさと着替えて部長になにか聞かれる前にさっさと部室をでて家に帰った。
「…ちゅーことがあったんやわ」
長い廊下を歩いて今は一階に降りるための階段を下っていた。
こいつも困惑した時期くらいあったんやなー
「んでな、その夜に謙也さんに電話したん」