SITENHOJI

□透明人間
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「くらら特製、くりあーぴーぷるになれちゃうよ☆薬の完成や!てなわけで謙也、試薬よろしゅうvV」




…と言われたのが確か30分前。
忍足謙也、透明人間になっちゃいました。














































「は…?俺がそれを試すん?」




「当たり前やん。こんなん頼めるの謙也しかおらへんし」




「いやいやいやいやふざけんのも大概にしぃや!そんなんで透明人間になれたら世の悪党さんは苦労せんわ!」




「まぁ、せやんなー。ええから飲みや」




「いやや!!ほんまは毒草の致死量がどれくらいなんか調べたいんやろ!」




「そんなんもう千歳で調べとるからええわ」




「え…」




「ほな、いくでー」




「ちょ、ま…っ!!ぶっ…」




俺がまだ喋っとるのにこいつときたら俺の口に薬が入っとるビンを突っ込んできた。




まさか吐き出すわけにもいかず(目の前に居る白石に吹き掛けてもうたら殺られかねないし)、仕方がなく生温い液体を飲み込んだ。




「……うぇ」




「おー、グダグダ言いつつも飲んだんやな」




「まぁ、な」




目の前でニヤニヤしとる白石をロッカーに閉じ込めてやりたい衝動にかられたがどうにか抑えつつ近くにあった飲み物を引き寄せて一気に胃に流し込んだ。







「あ、それ財前のやで」




「ぶふぁっ!!!!」




「うわ…謙也汚いわ…」




きき汚いってしゃーないやん!!




「白石が余計なこと言うからやろ!」




「ただ他人の物は飲んだらあかんって遠回しに注意しただけやん」




「だ、だからって光の名前出さんくても…」




「なんやねん、財前がどないしたん?」




更にニヤニヤが増した白石。
わかっててやっとるんやろ、自分。
地面に埋めるで?




「…あ、」




「あ?」




「謙也、薄くなってきとるで?」




「頭か!?」




「ちゃうわボケ。体や、体」




「あぁ、なんや体か…って、ぇえ??!!」




自分の手のひらを見てみれば確かに徐々に透けてきていた。
俺ほんまに透明人間になるん…?




「せや、さっき謙也が好きな財前がシャワー室に行ったみたいやで。せっかくやし覗いてきぃや」




「ちょ、それはあかんやろっ!!」




「あと、透明人間になったら声出せへんから。ほなごゆっくりどうぞ〜」




「なっ……!!??」




俺の体が完璧透明になれば白石はにっこり微笑んでから帰っていった。
…あれ、俺放置なん…?




(放置すんなやドアホーッ!!!)




所詮叫んだとしても誰にも届かないが。


















(来てもうた…)




あかんとか言いながらも来てしまったシャワー室。




べ、別に覗きにきたんとちゃうし…!
ひひひひかるの裸なん見たない…わけやないです。すんまへん。




下心ありありです。せやかてしゃーないやん!健全な男子中学生なんやから!




…おっと、さっさと行かんと光がシャワー浴び終わってまう。
いつもならドキドキなんせぇへんのにこの胸のトキメキが抑えられへん…!




震える手でドアノブをガチャッと回せば視野に入ってきたのは(おそらく)光の制服と練習着。




あ、なんや
これだけで少しムラッとき…ごほんっ。




とりあえず名残惜しいが制服と練習着はスルーしてすぐにシャワー室に向かった。




シャワー室の個室は五つあるがどうやら今は一つしか使われていないらしい。
お湯もその一つしか流れてへんし。
うわ、なんや好都合やん…!




いきなり扉を開けて光に不審がられたら困るから俺は扉の下の隙間から光が使うとるであろう個室内に潜入した。




(うわっ、うわっ、うわっ…!!)




ちょ、死ぬ
俺死んでまう…!
個室の空間はたかだか1.5mくらいやから俺と光の距離もごっつ近い。




ひ、光の体が手の届くところに…





(ちゅーか腰ほそっ!!色白ッ!!さ、触りたい…)




好きなやつの裸をみて欲情せぇへんやつなん居るわけもなく
俺は光の体に触りたい衝動にかられていた。




そんな俺に気付くこともなく光は黙々と体を洗っている。




(触ってもええかな…でもバレるよな…いや、でも触りたい…)




一人モンモンと考えてすぐに出た答えは触る、だった。
結局欲には勝てへんねん
男やし。




そうと決まればさっさと触ろうと脇腹に手を伸ばした



ど、




(ごふっ…!!)




光の肘が顔面にクリーンヒット。




え、え、
もしかして俺見えとるん??!!




鼻を押さえつつ光を見つめれば相変わらず黙々と髪を洗っていた。




たまたま、ほんまたまたま肘が当たっただけやんな。
じゃあまだ俺は見えとらんよな。




大丈夫大丈夫。
焦るな、俺。




もう一度再チャレンジで再び脇腹に手を伸ばせ、ば




(……い゛ッ!!!!)




今度は光の肘が脳天にクリティカルヒット。




やるやないか、光…




カンカンカンカンッ
忍足謙也選手、KーO!!!
そんなアナウンスが遠くから聞こえたような気がした。


















部活前の時間、




「そういえば聞いてくださいよ謙也さん」




「どないしたん?」




昨日、意識を手放してから再び目を覚ました時にはもうすでに自分の部屋に居て、どうやってここまで帰ってきたのか記憶になかった。




透明人間になれたなんて夢ちゃうんかな、なんて未だに疑っていたり。




「昨日部活後にシャワー浴びとったんすけど途中で二回もなにか殴ったみたいで、肘痛いんすわ」




「へ、は、ぇえ??!!」




うっそん…
あれほんまのことやったんや…




「俺、なに殴ってもうたんでしょうね」




「ささささぁ…?な、なんやろな?」




昨日のことを思い出して恥ずかしくなったのと、居たたまれなくなったのもあってさっさとコートに向かおうとすれば腕を急に引っ張られて




「俺の裸見て欲情しました…?」




って光に耳元で囁かれた。




「っ!!???」




「謙也さんのヘンタイ」




そう言えば光は俺よりも先に部室を出ていった。




「まさか…途中から見えてたんじゃ…っ!」




それから部室を勢いよく飛び出して白石をロッカーに閉じ込めたのは言うまでもない。




「せやから試薬言うたやん!」




「知らんわこのドアホ!!」




「財前の裸みて喜んどったくせに!」




「うっさいわ!」



 

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