壬生学園編
□第二章 恋の扉☆開錠
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「あれ・・・、おかしいな・・・。」
「どうしたの?歳世。」
放課後。
異常にもぞもぞしている歳世に、ほたるが後ろから話しかけてみた。
「え?ああ、螢惑・・・。実は、ここに入れておいたハズの自転車の鍵が無いのだが・・・。心当たりは無いか?」
「ああ!」
「え!?ど、どこで見た?」
「知らない。」
「なら大袈裟に反応すなーーー!!」
と、そんなやり取りをしていると、同じクラスの子助がトントンと歳世の肩を叩いた。
「お取り込み中、大変申し訳御座いません。3年A組の秀・・・いえ、紅虎さんが歳世さんを、あちらでお呼びで御座います。」
子助が指す先を見ると、教室の入り口に腰を掛けて、廊下側の空を見上げている紅虎がいた。
「何だろう・・・。分かった。ありがとう、穴山子助さん。」
歳世がペコリと頭を下げると、子助は「当然の事をしたまでです。」と、ご丁寧にお辞儀をした。
「じゃあな。一応ありがとう、螢惑。」
歳世は「一応」を何気に強調して、紅虎の元に駆け寄った。
「待たせた、秀・・・紅虎さん。一体何の御用ですか?」
「おお、あん時のべっぴんはん。あんさん、歳世はんっちゅーんやな!よー覚えとくわ。」
「べ、べっぴんって・・・そんなのお世辞に過ぎん。」
少し頬を赤らめ、もじもじしている歳世を見て、紅虎はにっと笑うと、ポケットをゴソゴソし始めた。
「えーとなあ、ああ、コレコレ。」
紅虎はひょいとポケットから何かを取り出した。
「・・・・はい?」
「ああ!間違えたわ!これ、わいの鍵や!あんさんのは、こっちやったわー。」
紅虎は慌ててもう一度ポケットを探り、ミッ○ーマウスのキーホルダーのついた鍵を取り出した。
「あ、これ、私の・・・・。どこで拾った?」
「あんさんがあの後慌てて走ってった時に落としてったんよ。『そこのべっぴんはーん』て呼んだんやけど、聞こえんかったん?」
紅虎は歳世に鍵を渡すと、頭を掻いた。
「ええ!?あれ、私のことだったのか?聞こえてはいたが・・・自分とは思わんだろう、普通。」
「いや、でも周りにおったおなごは皆振り向いたで?」
紅虎の言葉に、歳世は何故か罪悪感を感じてしまった。
「そ、そうか・・・;;」
「まあ、そのおかげで苦労したわ。あんさん何年かも知らんから、1年A組からずーーっと回って来たんや。感謝してやー。」
紅虎は冗談っぽく腰に手を当てて眉を吊り上げてみたが、歳世は心の底から申し訳なく感じ、
「す・・・すまない!!遥々大変だっただろう。本当にありがとう。この恩は忘れない。ありがとう、紅虎さん。」
と、ペコペコお辞儀した。
それを見て、おどおどした末、紅虎は堰を切ったように馬鹿笑いし始めた。
「ぶっ・・・・わははははははっ!!あんさん、ジョーダンが通じんお人やなあ。まあ、そういう感じも悪くないんやけど。」
「な・・・?」
紅虎はきょとんとしている歳世の頭に手を置いて、ぽんぽんと叩いた。
「あんさんは分からんで宜し。」
そういうと、右手を大きく上げて、「じゃあなー!」と走って去っていった。
「紅虎さん!あっ、ありがとな!」
歳世は力の限りそう叫んだ。
紅虎に届いたどうかは定かではないが・・・。
「あ、歳世さん。まだ帰ってなかったんですね。・・・・どうしたんですか!?顔が火照ってますよ!?」
ぼーっとしている歳世の顔を見たアキラが、驚いたように目を丸くしている。
慌てて自分の頬を触ってみると、熱があるようにとても熱かった。
どうしたというのだ――――――・・・・・。