風吹きぬける大地W
□とある日常の風景
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「もっと自信を持て。お前には才能があるんだから」
「でも……」
「事実、あのエクスプロードは……正直焦った。炎に関しては、俺より上だ」
「え……?」
思わぬ賞賛に、レッドは目を丸くした。
「カウントダウンを聞いて、構成が少し甘くなったな。それがなければ、あの短い詠唱であの威力……元々炎系統は扱いが難しいというのに、制御も完璧だった」
「……でも、兄さんには通じなかった」
「それとこれとは話が別だ」
苦笑し、レオはレッドに手を差し伸べた。
その手を、レッドは握って立ち上がる。
「……水も苦手だし」
「それは相性だから諦めろ。苦手を克服するか、それとも切って捨てるか……どっちを取る?」
「そりゃあ克服したい」
即答だった。
それから、レッドはまじまじとレオを見る。
「……そういや、兄さんの苦手分野って?」
「芸術関連だな。これは諦めてるから、俺は切って捨ててる」
そう、レオは嘆息した。
「術に関して言えば、闇系統もあまり得意ではないな……。呪い関係の防御は未だに護符頼みだし」
本来なら簡単に口を割ることではないのだが、相手が弟ということでレオはあっさりと話している。
「……あれ、でも兄さん闇系統の術、使えるよね?」
「使えるだけだ」
レオは、苦手分野はきっぱりと斬り捨てている。
それでも闇系の術が強力に見えるのは、それだけ才能があるからだろう。
「こればかりはどうにもならなかった」
再度レオは嘆息。
「その点、お前はまだまだ成長できる。……期待している」
「………」
その言葉に、レッドはどう答えていいか分からなくなった。
レオはこれ以上成長することはないと言う。
反対に、レッドはまだまだ伸びる……らしい。
それは、レオの先がそう長くないと示唆しているようで嫌なのだ。
「……兄さん」
レッドの心中を知ってか知らずか、レオは苦笑する。
「早く、俺を追い越せ」
レオは、レッドに抜かれるのを楽しみにしている。
レッドがレオに追いつくまで果たしてどれだけの月日が必要なのか……レッドには分からなかった。