風吹きぬける大地W

□舞台裏での戦い
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「そういうお前は……ハルモニアの者ではないな。あのNはハルモニアの家系だろうが……」

「確かに、私にはあのバケモノのような力はありませんがね……代わりに、こちらがあります」

ゲーチスが杖を一振りする。


とたん、ゲーチスの周囲に直径1メートルはあろうかというシャドーボールが10個以上も現れた。


いや、シャドーボールに似ているというだけ。

あれはひとつひとつが呪いの塊だ。


「あなたのようなバケモノを配下に加えてあげようと思いましたのに」

「御免だな」

吐き捨てると同時に、呪いの球がレオへと向けられた。



レオの弱点はお見通し、というわけらしい。



避けると、背後のミレイに命中してしまう。



『任せろ!』

『援護するわ!』

ボールから勝手に出てきたニュイとディアが障壁を張る。


2匹がかりで作り上げた障壁が軋む。



そのときには既に、レオはゲーチスの背後に立っていた。



無防備な背後に向け、ナイフを突く。



しかしナイフの切っ先な、ゲーチスの数ミリ手前で止まってしまう。


拮抗はほんの数秒。


だがゲーチスが次の行動に移るには、その数秒だけで十分だった。


周囲に炎が展開される。


触れれば火傷を通り越して炭化するであろう炎は、しかし気温を上昇させることはない。


舌打ちし、レオはゲーチスから飛び退く。


そこを狙い澄ましたかのように、風の刃がレオを襲った。


しかも、それだけではない。


風に煽られ、炎の勢いも増す。



レオの姿が炎に包まれた。




「レオ!」


ミレイの悲鳴が響いた。



しかし、既にレオの姿はそこにいない。



いつの間にかゲーチスの後ろに回り込んだレオが握るのは、雷で出来た槍。



「貫け!」


雷の槍が、ゲーチスの張った障壁ごとゲーチスを貫いた。
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