風吹きぬける大地W

□剣舞
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「ニュイ!」

ミレイが叫ぶ。


『あっぶね〜』

『間一髪、ね』


しかし、ミレイの懸念もそんな声が聞こえて解消された。


「……ったく」


とっさにディアが、ニュイをテレポートで移動させたのだ。



それを視界の隅で確認したレオは、安堵しながらもすぐさま動き出した。



目標を外した剣が地面を抉っている。


レオは、その剣を握る腕を蹴りつけた。


「っ!」

しかし、予想以上に固い。



本来ならば岩をも砕く1撃。

だというのに、ソードダンサーは僅かに怯んだ程度。



「物理攻撃の効果はいまひとつ、か……」


それどころか、近づいただけでノイズが強まる。


横薙ぎの攻撃を飛び上がることで回避したレオは、両腕に力を込めた。


脚力だけでは考えられないほど跳んだレオは、容易くソードダンサーの頭上を取る。


「潰れろ!」



エアプレッシャー



所謂魔力、ではなく波導を使った攻撃。


衝撃波を頭上から叩きつけられても、ソードダンサーは耐え抜いた。


しかし、周囲の地面は別。



隆起した大地が、レオの攻撃の威力を物語っていた。



もちろん、レオもただ地面を荒らしたわけではない。



「terra」



持ち上がった地面が、不自然なまでにソードダンサーを取り囲んでいく。


「adamanteus」


大量の土砂がソードダンサーの下半身を拘束するまで、数秒しかかからなかった。

『これで逃げられないわね』

『容赦しないからな!』

破壊光線2発が、ソードダンサーを直撃した。

「やったの……?」

「いや、まだだ」

着地したレオが、すぐさま追撃する。



案の定、ソードダンサーに多少の手傷は与えられたものの致命傷には遠かったようだ。


破壊光線の反動で動けなくなる2匹を、ソードダンサーが見逃すはずがなかった。



だから、そこにレオが割り込む。



正面から振り下ろされる剣を見据え、レオも自らの武器を手にした。




キィィィン




澄んだ音を立て、ソードダンサーの剣がレオの数センチ隣りの地面を抉る。


ミレイに、戦闘のことはよく分からない。

でも、レオがやったのはとんでもないことだということは理解できる。




レオは、いつの間にか持っていた刀で、ソードダンサーの腕を1本切断したのだ。




「ッ!」

レオが顔を顰めたのに、残念ながらミレイの立ち位置からは見えなかった。


それでも、レオが握る刀から嫌なオーラは視える。




一閃。



禍々しいオーラを纏った刀が、ソードダンサーのもう1本の腕を切断した。



しかし、それがレオの限界だった。

刀を支えにし、膝をついてしまう。



「レオ!」

「構うな!」

それでもレオは声を張り上げる。


「仇討ちだ!」


レオの命令に、2匹は思考する前に体が反応した。



仇討ちとは、味方が戦闘不能になっているとき威力が2倍になる技。



倍の威力となった攻撃が、ソードダンサーに命中した。

衝撃で、ソードダンサーの下半身を拘束していた土砂も吹き飛んだ。



レオは、乱れた呼吸を整えようとしながら立ち上がる。

いつの間にか刀は消えていた。



「レオ……」

ミレイの声を黙殺。


ミレイの言いたいことは分かる。


仇討ちの威力が倍になったということは、戦闘不能者がいるということ。


それはつまり、レオのことだ。


レオはもう、本来なら戦うことが出来ないというのに。



それでもレオの闘志が失われることはなかった。
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