風吹きぬける大地W

□砂漠からの来訪者U
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第一話 ファーストコンタクト





周囲は砂漠。


その光景はミレイにとってよく見慣れたものなのだが、ここはレオとミレイが出会った場所……オーレ地方ではない。


それどころか、2人の出身の世界ですらない。




この世界の名を『シルヴァラント』




どうしてここに来ることになったのか、発端はほんの数日前のこと。















数日間別行動をしていたレオが、ミレイの実家にやって来た。


レオが別行動をするのはよくある事。用事が終わる度にミレイの家に迎えに来るのは恒例となっている。


レオと会わなかったのはたった数日のことなのに、ミレイにとってはそれがとても長い期間に感じられた。

それは、レオと一緒に旅をするのが日常となっていたからなのか、それとも別の理由があるのか。


しかし、ミレイにとっては「レオといる」ということの方が重要なので、原因はどうでもよかったりする。


何より心配なのは、ミレイが目を離しているうちにレオが無茶をやらかして倒れていないか、ということだ。このあたりレオの信用のなさを表している。



予め迎えに来る時間は知らされていたので、インターフォンが鳴るや否やミレイは旅の荷物をひっつかんで玄関のドアを開けた。



「レオ、次はどこに行くの!?」

「……いや、しばらく1人で旅をしようと思ってな」

「却下。私も一緒に行くから」

「………」

コンマ数秒もなかったミレイの返答。

「……ク」

「どーして笑うかな〜」

「……いや。お前がそう言うの期待している俺がおかしくてな」

「え、それって……」

「……そもそも、そうでなければ誘ったりせず1人で行っていた。いつの間にか、ミレイが隣にいることが普通になってた」

「……そっか」

ミレイが笑う。

「だが、俺がこれから行く所は治安が物凄く悪くてな、物取りも横行してるし人死にも日常的……とは言わないがかなり多い。お前は、目の前で、例え盗賊であろうと、人が死ぬのを……俺が人を殺すのに耐えられるか?」

「そりゃあ……辛い、けど」

真顔に戻ったミレイは、真っ直ぐレオを見つめる。

「でも、レオと一緒だもん。……レオだって、好きで人を死なせるわけじゃないでしょ?」

そう言って、レオの手を取った。

「私はね、どこか知らないところでレオが死にそうになることの方がもっと嫌」

「……そうか。なら、来い」


ミレイの覚悟を知り、レオも覚悟を決めた。



例え何があっても、ミレイを守り抜く、と。



「……で、どこに行くの?」

「知らん」

「……え?」

思わず、ミレイは固まった。


「……どういうことなの」

「これから行くところは、現地時間で四千年程情報が途絶えている場所なんだ。最近その結界に綻びが生じて、ようやく行けるんだ。予め下調べはしてあるが、詳しいことは分かっていない」

「……えっと」

「ああ、こう言った方が早いか? ……要は、異世界だ」


「……は?」

いきなり許容範囲を超えた。


異世界の存在はいい。何よりレオの存在自体が非常識なのだから。


だが何故、わざわざ異世界に行く必要がある。


『ま、普通の反応よね』

『オレらも、聞いてたまげたもん』


「四千年も出入りが出来なかった場所の入口が見つかったんだ」

そう言うレオはどこか楽しそうだ。

「調査するには今しかないと思ってな。……ただ、かなり殺伐として、正当防衛で殺人も当たり前の世界だからお前にはつらいと思う」

「行く」

しかし、レオの忠告にもミレイは即答した。

「そりゃあ……人が死ぬのは嫌だよ。でも、レオが知らないところで無茶する方がもっと嫌」

どうやら人死によりもそちらの方が嫌らしい。


レオも、自分の信用のなさに苦笑する。

あえて突っ込みはしない。墓穴を掘るのが目に見えている。


「言っとくが、次はいつ帰れるか目処が立ってない。それでもいいか?」

「レオと一緒なら大丈夫! よろしくね、王子様」

「……だからそれは止めろと」


レオは溜め息をつき、それから笑うディアとニュイを睨みつけた。








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