風吹きぬける大地W

□雪の日
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雪がちらついている。

曇天の空を、レオは忌々しげに睨んだ。

「……レオ、ごめんね」

「どうして謝る?」

「だって……レオ、嫌そうなんだもん」

「……別に、お前といるのが嫌なわけではない」

「え……」

「……お前、もしかして勘違いしてたのか?」

「だってさ……私と遊ぶのが嫌なのかと思うじゃん」

項垂れるミレイの頭に、レオは手を乗せた。

「……本当に嫌なら、逃げている。そもそも連れ歩かないだろうが」

「……それもそっか」

ようやくミレイの表情に笑顔が戻った。

「じゃあ、何で?」

「単純に、寒いのが嫌いだからな」

「あー……オーレ地方って、砂漠で暑いから?」

「確かに昼間は暑い。……夜は冷えるがな」

「そういえばそうだね」

初めてオーレ地方で過ごした夜に、あまりの寒さにびっくりしたことを思い出す。

「……寒いと、どうしても動きが鈍くなるからな」

そう、レオが苦笑する。

「それが嫌なんだよ。突発的事態に対応できるか分からないからな」

「……心配性じゃない?」

「かもな……。だが、常に備えておきたいんだよ。……言い訳にしたくないからな」

レオは普段から自信満々な態度を見せないし、事実何事にも余裕で対処できている。

だがそれは綿密な計算と普段から入念に準備をしているから、ということをミレイは知っている。


神経質で、心配性なのだ。


だからこそ、レオは余裕を崩さない。

決して内心を悟られないようにしている。


「……ありがと」

「………」

「何よその沈黙!」

「……いや」

笑われている。

表情に出ていないが、ミレイにはすぐ分かった。

「私がお礼言うのおかしい!?」

「いや……ミレイらしいな、と」

レオが常に気を張っているのは、ミレイがいるからでもあるのだから。

お礼くらい言うというのに。

「あくまでお前はついでだ。俺は臆病だからな、お前がいてもいなくても、周囲を警戒しているさ」

「……じゃあ、そういうことにしておく」

レオなりの優しさに、ミレイは笑った。
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