風吹きぬける大地W
□兄の思いを知らず、弟の願いを知らず
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「……むしろ、俺としては外の奴らが平和ボケし過ぎていると思うのだが」
「これが普通だったし……ね」
むしろ、2人からすれば他の地方が平穏すぎるのだ。
加えて2人の出身である村は昔ながらの技術……それも決して公にできないものを代々受け継いできた。
その中には格闘術も含まれており、レッドとてそれを叩き込まれている最中である。
「……これが、普通?」
思わずブルーは2人が戦っていた……ではなく特訓をしていたフィールドを見る。
何故か地面が荒れていた。
へし折れている木や、砕けている岩もある。
まるでポケモンバトルの跡のようだが、これを行ったのは生身の人間である。
しかも2人は道具を一切使わず、その身ひとつでこの惨状を作り出したのだ。
ブルーたちもその現場を生で見ていなければ信じなかっただろう。
「……甘いよブルー。レオは指先ひとつで岩をも砕くから」
「え゛?」
思わずイエローはまじまじとレオを見た。
「何故俺だけ言う?」
他人事のように、とレオは首を傾げた。
「お前だって出来る……というよりそれくらい簡単に出来るようにならないと問題外だろうか。しかし、指で岩を砕く必要性は感じないが……」
「……そういう問題ではないと思うんだが」
「……というより、どうやったらこうなるんスか」
突っ込むシルバーの隣で、ゴールドは改めて惨状を見回した。
「あはは……今日は少しやりすぎちゃった、かな?」
レッドも乾いた笑を漏らす。
それからちらりとレオを見ると、当然だろと言わんばかりの視線。
つまり、整地しておけということだ。
「……ハイ、ヤリマス。俺そっちは苦手なのに……」
「なら尚更特訓だな。そんなことじゃ俺を超えられんぞ」
「う゛……」
レッドが肩を落とした理由は、グリーンたちには分からない。
「……そもそも、お前はそっち方面の才能も充分あるだろう。苦手だと思い込んでいるから出来ないんだよ」
「……そう言われても、なぁ」
苦手なものは苦手。
というより身近に自分の遥か上をいく人物がいるのだから劣等感を持ってしまう。
そんなレッドの心情に気づき、レオはニヤリと笑った。
「そんなのでは、いつまで経っても俺を超えられないな」
「それは……困る」
「だろ? ……お前には、俺を超える才能と……それに見合う器がある。だから、それを絶やすな」
「……本当?」
「ああ。……羨ましいよ」
最後の言葉を、レッドは聞き損ってしまった。
「え?」
「……何でもない」
それからレオは、置いてきぼりをくらっているグリーンたちを見た。
「今日はここまで、だな」
「え、でも……」
「こいつらが来たら、それどころじゃなくなるだろ?」
少し残念そうに、レオはレッドに背中を向けた。
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