風吹きぬける大地W

□彼がここにいる理由
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何気なしにレッドの家の方へと向かう。

「……そーいや」

頭の後ろで手を組むゴールドが、空を見上げた。

「シロガネ山で先輩と修行してるときに聞いたんスよ、何で強くなったんスかって」


何度バトルしても、レッドに勝てなかった。

経験の差、と言われてしまえばそれまでだったが、それだけでは自分が許せなかった。


ゴールドにとってレッドは目標で、だからレッドがそこまでして強くなった理由を知りたかった。


「そしたらレッド先輩、助けたかった人がいたって言ったんスよ」

「助けたかった、人……?」

レッドは過去形で言った、ということは。

「ああ、それはオレも思って、そしたらレッド先輩が笑ってちゃんと生きてるって」

「……それ、レッドの両親のことかしら?」

「ん〜……でも、そんな感じじゃなかったんだよな〜……」


あの時のレッドは。





『あの時の俺はとても弱くて、関わることさえ許されなかった。だから俺は、あの人を助けるために強くなりたいんだ』

『またまた〜、レッド先輩は充分強いっスよ』

『そんなことないって。俺なんか、あの人の足元にも及ばないよ。今まで勝てたことないんだもん』

『え、マジっスか!?』

『マジマジ。あの人が負けるとこ、見たことないもん』






“あの人”というのが、レッドとどういう関係だったのかは分からない。

だが、その人のことを騙るときのレッドはとても楽しそうで、誇らしげだった。

ゴールドにとっての憧れの先輩であるレッドがそれほど慕っているという人物に会ってみたい。

「へ〜、レッドが勝てない人、かぁ……」

「その人は、レッドさんがマサラに来る前の知り合いなんでしょうか」

「レッドが勝てない程の実力者なら、有名になっていてもおかしくないが……」



レッドの家は、予想通り人気がない。

まだ帰ってきていないらしい。


流石に忍び込むわけにはいかないので、玄関の前で待つことにする。












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