風吹きぬける大地W
□秘密の側面
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じっとクレインは木々の向こうを睨む。
狙撃手がその場に留まって第二射を撃つことはない。
何故なら本来狙撃というものは1発で仕留めるために距離を取るのであり、かわされた、避けられたというのは自分の位置を相手に知らせるものなのだから。
当然のこと、クレインも相手の居場所を突き止めている。
だというのに、狙撃手はその位置から離れる気配がない。
しかも、あの殺気。
クレインに向けられるものではないため気付くのが遅れたが、この様子では相手は素人。
ただいい装備が与えられただけなのだろう。
そして標的であるリュウトを仕留めて、シャドー戦闘員たちで研究所員を襲う手筈だったのだろう。
だが、戦闘員はこれで全てではない。
未だ隠れ潜んでいる戦闘員がいる。
本来なら今すぐにでも狙撃手を取り押さえたいところだが、ここには非戦闘員が大勢いる。
もしクレインがここを離れたとき、戦える者がいない。
「くっ……」
「クレイン所長……」
逡巡しているとリュウトの声がして、慌ててクレインは笑顔を作ってリュウトの元へ駆け寄った。
クレインは自分の白衣を被せることで見られていないし、幸か不幸か銃弾でガラスが割れた音に研究所員は注目していた。
「……リュウト君、怪我はないね」
「え、あ、はい。……でも、この人たちは……」
「とりあえず、警察に連絡……」
クレインからは狙撃手は枝葉に隠れて見えない。
だが、銃口が見えたような気がした。
前に出ようとするリュウトを腕で制す。
直後、機関銃の連射がクレインとリュウトの周囲を襲った。
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