仮想と現実U
□とんだ災難
2ページ/8ページ
「なあ、楚良を倒そうとは思わなかったのか?」
「別に。会ったらバトルしてただろうけど、会わなかったからな」
むしろ会わないようにしていた。
IDも違う別人なので同時ログインも可能だ。
だが2人同時でバトルをするのは骨が折れるのであまりやらないが。
「っつーかどうしてそんな事訊くんだよ」
「いやさ、最近楚良の噂聞かなくなっただろ?」
丁度「死の恐怖」の名が出始めたあたりから楚良のログイン数は減っている。
「俺さ、ずっと昔から楚良を倒すこと狙ってるんだよね」
「無理だな」
「なっ!」
あっさりハセヲが否定し、クーンが声を上げた。
「……何かさ、今日のハセヲ冷たくない?」
「気のせいだろ?」
「……とにかく」
咳払いをし、話を戻すクーン。
「言ったっけ?俺がR:1からのプレイヤーだって」
「……ああ」
少し考えてからハセヲは頷いた。
「楚良はその頃から悪名高くてな、奴を止められるのはそれこそ赤い稲妻くらいだった」
「で、クーンは有名になりたくて楚良を倒そうとしたのか?」
「まぁ、そんなとこだ」
「バイクミッションで充分有名だろ」
バイクミッションのランキングでは松とクーンの名前が上位に入っている。
匂坂とかまで入ってたのは意外だったが。
「だが、俺はあくまでもThe Worldの平和を守りたいんだ」
「……楚良以外にもPKは腐るほどいるだろう」
突き詰めればハセヲもPKだ。
PKを返り討ちにした一般PCもPKKに入れるのだとしたら、ほとんどのプレイヤーがPKに入るのではないのだろうか。
あのアトリですら、ハセヲと共に冒険している間にPKに襲われている。
「だが、あんなに悪い奴はそうそういないだろう」
「………」
ハセヲは無言だった。
.