救済と撲滅
□ZERO
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この争いの世界で誰が夢を持てよう。
儚い夢は意味の無いもの。
未来に待っているのは大切な存在を犠牲にするという、悲劇的な終幕かもしれないというのに。
未来とは暗闇。
そこに火を灯したって闇の底は見えない。
崖の下で起こっている戦争をただ見ているだけのキリエ。
赤い髪が風で揺れる。
風に乗って火薬の臭いがここまで届いた。
そういえば、獣人側の研究者が便利な道具を発明したと聞いた。
この戦争、人間の負けだろう。
元々人間は体の作りで獣人に敵うはずがないのだ。
そして技術も獣人の方が上回った。
なら人間に勝ち目は無い。
キリエはそれっきり戦争には興味を無くし、その場から立ち去った。
「おい!お前!」
「ここで何をしている!」
追い剥ぎの類なのか、獣人が数人やって来た。
こいつらの接近に気付かなかった自分に苛立ちを覚える。
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