風吹き抜ける大地X

□招かれざる来訪者
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目標物のない砂漠では、迷いやすい。

喉がかわく。

陽射し避けの布を被り直し、ルークは汗を拭った。

「……何も、ないね」


異様な静けさ。


魔物1匹さえ、いない。




まるで、何かに怯えているかのように。




「……そういえば、大佐って譜術はどうなんですか」

「私は問題ありませんが……兵士の中には威力が弱くなったという者もいます」

「我がキムラスカも同じようなものですわ」

「教団でも、第七音譜術師は簡単な怪我は治さず手当てだけに留めてます」

プラネットストームを停止させた影響は、じわじわと出ているようだ。


ジェイドなど元々素養の高い者、アニスのように歴戦を経て鍛えられた者はまだ譜術を今まで通り行使できる。

だが、元々素養の低かった者は徐々に譜術が使えなくなってきている。

「譜業も、使えなくなってきてるのが出てきてるしなぁ」

譜業マニアのガイとしては、そこが辛いところだろう。

「俺は譜術が使えないから分からないけどなぁ」

そう、ルークはぼやいた。




とたん。




「え」



視界が歪む。



「っ!?」

「きゃっ!」

どうやら、他の皆も同じらしい。



立っていられなくなり、ルークは膝をついた。








暗転。


































「……大丈夫、ですか?」






優しげな声が、聞こえた。

























目を覚ましたら、森の中だった。


今までケセドニアの砂漠にいたというのに。

かつてルークにつき従っていたチーグル、ミュウの故郷を思い起こさせる森。


「大丈夫ですか?」

ルークの顔を覗き込んでいたのは、麦わら帽子を被った小柄な少年だった。

「あ、ああ……。ここって……」

「ここはトキワの森ですよ」

「トキ、ワの……森?」

聞き慣れない名前。

「……そうだ、皆は!?」

慌てて跳ね起きる。


周囲を見回せば、ティアやアッシュたち誰1人欠けることなく近くに倒れていた。


「おい、アッシュ! ティア! ナタリア!」

ルークの声に、アッシュが瞼を震わせた。

「……くっ、我々は一体」

真っ先に身を起こしたのはジェイドだった。

眼鏡の位置を矯正し、周囲を見回す。

「皆さん、ここで倒れてたんですよ。……見慣れない恰好ですけど、どちらからいらっしゃったんですか?」

「……あなたが、助けてくださったんですの?」

「僕は何もしてませんよ。……森がざわついたんで、様子を見に来ただけです」

そう、無邪気に微笑む少年。

「あ、僕はイエローです」

「……俺はルーク。よろしく」

ルークの緋色の髪を見ても、少年は何も言ってこない。

だから、ルークもあえてフルネームを言わなかった。

「はうあっ! 何で森にいるの!?」

「……そういえば、どうして皆さんここにいるんですか? 一応ここ、危険なんで地元の人は立ち入らないようにしてるんですけど」

「危険、なんですの?」

「今はそこまで危なくないですよ。でも、まだ凶暴なポケモンがいるので、トレーナーじゃない人はあまり進められてません。皆さんはポケモントレーナー……じゃないんですか? ……それに、それって……」

そこで、イエローはルークたちの持っている武器に気付いたらしい。


剣を見て、顔を青ざめさせる。


「……あの、それ……本物、ですか?」

「ええ、本物ですが……それがどうかしましたの?」

「え、だって……本物って、何とかって法律違反になりませんっけ? それに、そんな危ない物持ち歩くなんて……劇団か何かですか?」

「……は?」

イエローの言葉の意味が、分からなかった。

「いや、だって危ないだろ? 襲われたら応戦しなきゃいけないし」

「ポケモンに襲われたら、ポケモンで戦うか逃げるだけじゃないですか。わざわざ応戦する必要なんて……」

何かずれている。

「……ちょっと待って。まずポケモンって何?」

「え、ポケモンを知らないんですか?」


互いに沈黙。




そこでようやく、情報の共有にをすることにした。













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