風吹き抜ける大地X
□馬鹿と天才は紙一重
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「この、化け物めっ」
そう吐き捨てられるのも慣れたものだ。
冷めた目で、レッドは容赦なく心臓を貫いた。
そして兄より唯一勝っている炎の術で、焼き尽くす。
「うん、今更だ」
化け物。人外。人の皮を被った悪魔。頭がイカれた連中。
そんな言葉、数えきれないくらい言われている。
煉獄の悪魔。
最近ではそう言われるようにもなってきた。
だがそれは、レッドにとっては褒め言葉だ。
血のついたナイフを払い、服に返り血がついてないことを確認する。
「……よし」
ポケモンバトルが温い、とは思わない。
ポケモンバトルだって大好きだ。互いのポケモンの能力、技、策略、そしてトレーナーとの絆。全てがワクワクさせる。
レッドだって、命のやり取りを好き好んでしているわけではないのだ。だが、この世界と関わったときに敵の命を刈り取り、また殺される覚悟もした。
とはいえ。
弱い敵ではつまらない。どうせなら強者と戦いたい。
それは本能にも並ぶ欲求。
「つまらなそうな顔をしているな」
「……レオ」
手には成果である宝石を持ち。レオがレッドの元へとやって来た。
悠々とした足取りだが、周囲の警戒を怠ることはない。
「弱い相手だったか」
「……うん」
高望みしたいわけではない。レッドだって死にたくない。
だが、強者と戦いたい。
「……何つーか、実感する。俺たちってやっぱ、頭イカれてるんだね」
レッドの言葉に、レオは苦笑した。
そんなこと、言われるまでもない。
昔から、言われ続けてきたことだ。
レオが歴史を探求するように。レッドがバトルを求めるように。
特定の分野において見せる、異常な執着心。
それが働いて千年以上も閉鎖的な村で暮らすようになり、ずっと儀式を続けてきたりもした。
ある者は研究者として大成し、ある者は剣豪として名を馳せた。
だから、よく言われてしまう。
少しおかしい、という程度ならいい。
狂ってる、イカれてる。そう称されるのが常だ。
特に一般人からは。
「フン、やりたいことをやって何が悪い。少なくとも、節度を弁えてる分奴らよりかはマシだ」
しかしレオは、それを賞賛と捉える。
「それともレッド、お前はその欲のためにソウルイーターになりたいか?」
「絶対ヤダ」
すぐに、レッドは反論した。
ソウルイーターとは魂を喰らい力と変換すること。
それで得た強さなんて、レッドは拒否する。
「それでいい。お前は他の連中とは違う。……胸を張れ。その姿勢が、お前をカントーのポケモンチャンピオンとしたんだ」
他の誰よりも。レオの言葉は素直に受け入れられた。
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