風吹き抜ける大地X

□それはどういう意味でしょう
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その町の中央広場には、一際巨大なクリスマスツリーが。


どうやら定番のデートスポットらしく、男女2人組が多い。



自分もそんな内の1組だということを棚に上げ、レオはツリーよりも周囲の観察に勤しむ。



元来人の多いところはあまり得意ではない。


もし襲撃にあったら。事故が起きたら。



周囲の人間、立地、色々と気を配り続けるのは精神的に負担がかかる。





だが。





「うわー、綺麗だね」

隣りで無邪気に、眼前の光景で喜んでいるミレイを見ると悪くないと思ってしまうのだ。

「……大分、絆されたな俺も」

「何か言った?」

「何も?」

ミレイの言葉に首を振り、レオもイルミネーションへと視線を移す。





故郷では絶対に見られないであろう、光の芸術。


確かにそれは人を感動させるものなのだろう。




「……綺麗、か」


その光の光景が綺麗というのなら、そうなのだろうと納得させる。


どうも芸術というのはよく分からない。



「そんなもん、なのか」

「レオって情緒ないな〜」

「自覚はしてる」

「猶更性質悪い」

「諦めろ」

「うん」

しかし、何故かミレイはニコニコと笑ったまま。

「……何だその顔は」

「だって、分からないって思ってても一緒に来てくれるじゃん」

「ああ、そうだな」

「……そこで真顔で返されると、こっちの方が照れるんだけど」


「事実だからな。……俺1人では来ようとは思わんが、ミレイとなら……という気分にもなる」


「……そ、そっか」


赤くなった顔を隠すため、ミレイはマフラーを直す素振りを見せた。



「どうした、寒いのか?」

そんなミレイの顔を、レオは覗き込む。




その距離、30センチ。



「〜〜〜〜〜!」


煙を立てそうなほど赤くなったミレイは、慌ててレオから距離を取った。


「なっ、なっ、なっ……!」

「ん? どうした熱でも出たか?」

ニヤニヤと笑いながら、距離を詰めようとするレオ。逃げるミレイ。


「な、何でもなーい!」

せっかく来たというのに、ミレイはあっという間に走り去ってしまった。



「……ったく」

1人残されたレオ。しかし表情は楽しげで。



「少し、からかいすぎたか」



だが、すぐに表情を引っ込めてわざとミレイとは反対の方角へ歩き出した。












ミレイとの関係はとても心地よいもので。


だからこそこの距離を保ちたいと思いつつも、反面それでいいのかと疑ってしまう。




「俺なんかで、いいのかねぇ」


隙を見て屋根の上に飛び乗り、そこから屋根伝いに進んだ先は。


この町で1番高い建物。教会の屋根の上。


町が一望できるスポット。

1歩間違えれば転落死は免れないが、レオに危なげはない。


P☆DAで検索を終え、レオは視線を下界へと向けた。




どこもかしこもカップルだらけ。




先程までは、間違いなくレオとミレイもカップルに見られていただろう。



実際はただの相棒であり、恋人などという甘い関係ではない。告白だってしたことないし、したがって付き合ってもいない。


だというのにミレイは物好きなことにレオについていき、レオもそんなミレイを疎んじることもない。



奇妙な関係だ、とつくずく思う。だがそれを止める気もない。



そのことに唇を歪め、今度は空を見上げた。












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