風吹き抜ける大地U

□少女と青年と
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何故かレオは研究所の外まで連れて来られた。

「マナが100数えたらお兄ちゃんを見つけに行くから、お兄ちゃんはどっか隠れて!」

どうやらかくれんぼというものをするらしい。

「……俺が隠れるのか?」

「そうだよ! いーち、にーい、さーん、しー」

すでにすることが決定事項らしい。

マナは両手で目を隠して数え始める。

「……ふむ」

この場合屋外に出てもいいのだろうか。

屋外ならば木に登って時間を潰すところなのだが。


一応レオは部外者なので、物陰に隠れるという行動は怪しすぎるだろう。


もちろん誰にも見つからずにいる自信はあるのだが、それだとこの少女には酷かもしれない。


レオは息を吐いて、丁度良い場所を探すことにした。












レオが入ったのはクレインの私室。

一応クレインからは好きに使っていいと予め許可を貰っている。

「クレインめ、いつの間に……」

以前見たときより蔵書数が増えている。

それの大半が研究論文だ。

さすがにレオも論文を旅先で仕入れるのは難しいため、最近は読んでいない。

思わずそれを手に取って読みふけってしまう。


よほど集中していたレオは私室の扉が開く音ではっと顔を上げた。

「いたー!」

マナだ。

マナはずかずかと部屋に入ってきて、レオに指をつきつけた。

「お兄ちゃん、ここは所長のお部屋だよ。勝手に入っちゃいけないんだって!」

「……そういう君も入っているが」

「うっ……マナはいいんだもん!」

「なら俺もいいな。それに……」

それ以上続けようとして、口を噤む。

子供に泣かれると後が面倒だ。

「……いや。それより、時間は大丈夫なのか?」

気付けばかなりの時間が経っている。

「あっ! お母さんに怒られちゃう!」

とたんにマナが走り出した。

「じゃあね、お兄ちゃん!」

「ああ」

元気良く走っていくマナを見て、レオは溜め息をついた。
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