風吹き抜ける大地U
□とある潜入捜査官の調査
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ハンサムはすぐにこの研究所の異変に気付いた。
研究員のみならず、シャドー戦闘員まで眠りこけているのだ。
考えられるのは睡眠薬。これが催眠ガスとなるとハンサムも眠っていただろう。
ハンサムに影響がなかったのは睡眠薬を口にしなかったから。
「一体誰が……?」
気付いたときにはすでに遅く、この研究所にいたはずのポケモンたちが全て消えていた。
誰かが持ち去ったに違いない。
ハンサムがさらに研究所の奥へと向かおうとしたとき、人が近づいてくる気配がした。
はっとして物陰に隠れる。
やって来たのはまだ若い3人組だった。
うち1人は見覚えがある。
あのコーヒーを渡してくれた研究者……クレインだ。
もしかしたらコーヒーの中に睡眠薬を入れたのかもしれない。
「なんか、この建物面倒な作りしてない?」
少女がぼやく。
「侵入者を警戒してるんだろ」
それに答えたの少女の隣を歩く青年だった。
「おまけに最奥部に行くためのパスワードは定期的に帰られるからね。まあ、これくらいの組織なら仕方ないかもしれないけれど……」
クレインが苦笑いする。
「……こんな所に長居する必要ない。さっさと壊せば……」
「壊すって……」
乱暴な物言いに少女が引く。
「駄目だよ。壊すなんて乱暴な」
「そうよそうよ」
クレインに追随して頷く少女。
「壊したらボルグに気付かれちゃうかもしれない」
「そこなんですか!?」
あの頑丈なロックを壊せるというところを否定していない。
天然なのか、それとも出来るのが当然なのか……。
「……時間がない」
「焦る気持ちは分かるけど、らしくないよ」
「……すまん」
青年が息を吐いた。