仮想と現実

□幻の喪失
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「ハセヲさん……」

アトリが1歩前に出る。

「もしかして、風邪を引いたんですか?なら休んだほうが……」

「風邪、ねぇ……」

楽しそうに、ハセヲは笑みを浮かべる。


それは普段ハセヲが浮かべない、満面の笑み。


「ざ〜んねん。ボクちん風邪引いてないよ。至ってフツー」

「……あなた、誰?」

パイがまじまじとハセヲを見る。

あまりにもいつものハセヲと違いすぎて、同型のPCと考えて方が自然だった。

ハセヲのXthフォームはチートのため、目の前にいる人物もチートしているということになるが……。

「え?ハセヲだみょん♪まつおばしょーのね」

「松尾芭蕉?」

首を傾げるクーン。

「そ、ばしょー。しょこくまんゆーした人」

「それくらい知ってるけど……」

困ったようにパイを見るが、パイは肩を竦めただけだった。

「ふざけるのはいい加減にしなさい。あなたが誰なのか知らないけど……」

「だからボクちんハセヲだって。オネーサン忘れちゃったの?」

「……やはり、あなたは私達の知っているハセヲではないわね」

あのハセヲならパイのことを「オバサン」とは言っても「オネーサン」とは言わない。






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