風吹きぬける大地W

□兄と弟の弟子
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これは遺伝、というよりも呪いの域だとレオは考えている。



元々レオの一族は総じて能力値的な意味での器が大きい。

つまり並みの人間よりも何かしら優れた能力を持つことが多々ある。むしろそうでない場合の方がほとんどない。


当然レオの実弟であるレッドにもそれは当てはまる。


レッドは素質ではレオにも迫るものを持ち、尚且つポケモンたちにも親しまれやすい。


何が言いたいかというと、だ。



「……ごめん兄さん」


珍しく、レッドはベッドの中でへばっていた。


「気にするな。俺も経験がある……というより俺は未だに1年のうち90日前後は寝込んでいるからな」

「……兄さんそれ洒落にならない」

「ああすまない」

レオは悪びれず肩を竦めた。


強大な力を持つが器が脆いレオと違い、レッドには力に見合った器を持っている。

だから寝込むということは早々ないはずなのだが……。


「……ねえ兄さん知ってる?」

「ん?」

「俺、もの凄く不安なんだよ。兄さんが倒れる度に、兄さんがとても遠くにいっちゃうような気がして」

「………」

「兄さんが手の届かない場所にいっちゃうんだと思うと怖くてさ……」

「……そうか」

レオが声に出さず、笑う。

それにレッドは不思議そうな顔をした。

「だからか。ガキの頃、俺が倒れる度にずっと俺の手を握っていたのは」

とたん、レッドは目を見開いてレオを凝視する。

「気付いてたの!?」


高熱で魘され、心臓が悲鳴を上げ、意識が朦朧としていても。


あの手の温もりと……周囲の賑やかでありながらも、案ずる声。


「……ああ」

レオが目を伏せる。

「お前は、父さんや母さんに何度叱られても俺の元に来たな」

「だって……俺は、兄さんの弟だよ? なのにさ……」

「……すまんな」

「……兄さんは何も悪くないじゃん。謝らないでよ」

「俺の弟だからこそ、お前には迷惑をかけている」

そうレオは自嘲する。

「こんな兄を、よくもまあ兄と慕ってくれるな」

「……兄さんは自己評価が低すぎ。それにさ、兄さんも来てくれただろ? 俺が倒れたとき、夜中にこっそり」

レッドの言葉に、レオは舌打ちしたくなった。

「……何のことだか」

「俺だって、覚えてるよ。とても苦しかったのに、突然息が楽になってさ……。でも、起きても誰もいなかった。元気になって、兄さんに会いに行こうとしたら、今度は兄さんが倒れててさ。……それで、マサがその日レオが夜中抜け出してたって教えてくれた」

「……奴め」

今度こそ、レオは舌打ちした。

「……昼間に訪問しても、追い返されたから仕方なく、だ。俺の手を煩わせることなどない、だとさ。兄が弟の心配をして何が悪い」

「……兄さん」

「……もう寝ろ」

照れ隠しか、レオは顔を背ける。

「うわっ」

そして強引にレッドの顔の上に毛布を被せた。

「ちょっ、窒息する……!」

「そのまま安眠しとけ」

「ひどっ!」

そんなじゃれ合いすらレッドには滅多にない体験で、毛布の中でレッドは笑った。








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