風吹きぬける大地W
□夢のままで
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肩で息をし、レオは背中を壁に預けた。
床に座り込むことこそなかったが、していてもおかしくないくらい疲れている。
そしてそれを隠す余裕もない。
それは普段のレオからは想像しにくい姿だった。
「……相当、参ってるね」
苦笑し、クレインはスポーツ飲料の入ったペットボトルを差し出す。
レオもそれを黙って受け取り、一気に呷った。
レオがこのポケモン研究所を訪れたのは突然だった。
目立つ外相こそなかったが、精神力の尽き果てたレオと意識を失ったミレイ。
クレインを慌てさせるには充分だ。
「……負けるつもりは、毛頭なかった」
一息つき、ようやくレオは口を開く。
「負ける要素もなかった。……だというのに、俺は竦んでしまった」
クレインは黙ってレオの話を聞く。
「だというのに、奴の目を見たとき……奴の想いの一端を識ったとき、竦んだのは俺の方だった。……想いの強さで、俺は負けてしまった」
レオは自らの身体を抱く。
「だから、逃げるしかなかった」
レオの言葉が震えていた。
「……奴の、苛烈な思いに……俺は負けを見てしまったんだ」
「……でも、レオは生きてる」
レオの隣に、クレインは座る。
「相手の力量と自分の状態を正確に判断して、無理な勝負をしない。それがレオのいいところだよ」
「……違う」
だが、レオは頭を振る。
「俺は、弱いだけだ」
あの男と向き合うことから逃げてきた。
大切な人の為に何もかもを……世界すら犠牲にしようとした男。
なまじ外見が似ているため、嫌悪しか抱けなかった。
レオでは、選ぶことが出来ない道を容易く選ぶあの男から。
「……認められず、嫌悪して、逃げてきただけだ」
「……でも、それを認められるのもレオの強さだ」
「……そう、だろうか」
「うん、そうだよ」
クレインの苦笑に、レオは憮然そうな顔をした。