風吹きぬける大地W
□怒りの矛先
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油断した。
いくら後悔したって後悔しきれない。
「ミレイ!」
レオの声が空しく響いた。
空に浮かぶ音譜帯が普通に思えるようになった頃。
何故かルークたちは強盗団捕縛に乗り出すことになった。
戦争での物資不足。さらには大地が崩落した混乱に乗じ物取りが急増したのだという。
「……どこにでもそういう奴はいるもんだが」
元盗賊団所属のレオは溜め息をついた。
「どうして俺たちがやる必要がある」
「だからといって、見過ごすわけにはいきませんわ!」
真っ先にそう言ったのはナタリアである。
どこからどう見ても上物の服装。明らかにカモだ。
「確かにな〜。ったく、こんなときによく強盗するよな〜」
そうぼやくルークの服も、仕立てがいいのは一目瞭然。
「それで困る人も出てきてますし……」
イオンだって、知っている人は知っている立場の人間だ。導師だけあっていい装飾品を持っている。
「イオン様が言うなら……」
「さっさと終わらせましょう」
「やれやれ。討伐決定ですね」
「まあ、これも人助けだと思って」
こちらも嘆息したり苦笑したり、仕方なく強盗団討伐に動き出すらしい。
「行こ、レオ」
「……仕方ないな」
レオ1人が反論したって無意味という雰囲気になり、レオも諦めた。
レオの懸念はジェイドの服装に強盗団が気づかないか、ということだった。
何せジェイドはマルクトの軍服を着用している。もし強盗団がそれに気付き臆してしまうと、逃げられるという可能性もあった。
だがそれも杞憂に終わったらしい。
「……位置取りが甘い」
早速のレオの駄目出し。
「標的を定めてから捕捉地点までの行軍も遅い。周囲の警戒も怠っている。動きが雑。……評価できるのは」
レオは嘆息し、周囲を見回す。
「数が多いってことか」
「ちょっと何でそんな呑気なのよ〜!」
耐えられず、アニスが叫んだ。
そう、レオたちは囲まれている。
マルクト軍の高官にローレライ教団の最高責任者、おまけにキムラスカの貴族。
よくよく考えれば狙われるのは当たり前。むしろ護衛がいないのがおかしいくらいだ。
「いや、よくよく考えればこうなるのは当然だなと」
レオがもし強盗団の立場だったら間違いなく狙う。
リスクなど考えない。そのことを考えていたらルークたちを襲わないだろうし、強盗などしていない。
「さあ、行きますわよ!」
誰よりも張り切っているナタリアが、弓を番えた。
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