風吹きぬける大地W

□舞台裏での戦い
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確かに、ポケモンを道具扱いする人間をレオは沢山見てきた。


ポケモンだけでなく、同じ種族である人間をも道具……いや、それ以下の扱いをする人種がいることを知っているし、実際そんな扱いを受けた。


だから、レオは彼らを嫌悪する。




しかし、かといってポケモン全員が人間を嫌っているわけではない。

もしそうであればディアとニュイはとうにレオの元から離れているだろうし、レオもそれを無理矢理縛りつけようとは思っていない。


本当に心から信頼できる、慕っている人間に自ら付き従うポケモンがいることも知っている。

そうでなければ、社会的立場からすれば悪であるヘルコンザが、ああもポケモン、人間から慕われている理由が分からない。




つまるところ。




「お前らプラズマ団の理念には、賛同できないってことだよ」


レオの返答は、銃弾と同時だった。


いつの間にか握られていた拳銃から放たれた弾丸は、しかしダークトリニティに避けられる。


それに僅かに柳眉を上げながらも、レオはすぐ次の動作に移った。


軽く地面を蹴り、跳び上がる。


レオを三角に囲むようにして、ダークトリニティが位置取りをしていた。



瞬間移動ではない。武術で言う縮地、という技だ。


どうやら彼らも俊敏さが売りらしい。実際、相手がレオでなければ為す術もなく取り囲まれていただろう。


ダークトリニティは、レオの姿を見失っていた。



そしてレオの置き土産が発動する。




音と閃光が迸る。



スタングレネードによる爆音と閃光が、ダークトリニティの目と耳を潰した。


そして着地したレオは、口の中で言葉を紡ぐ。


「――――――」


その言葉が、ダークトリニティの耳に届くことはなかった。


あっさりと地面に倒れ、深い眠りについた3人を一瞥する。



あれだけの爆音と閃光が、レオにダメージを与えた様子はない。


閃光はゴーグルによって遮られていたとはいえ、音を防ぐ手段をレオが持っていたとは思えない。



そして、それはダークトリニティの背後に佇む男にも言えること。


とっさに閃光は身を包むマントで遮ったようだが、それでも音を防ぐことは出来ないはず。



「……読まれたか」

小さくレオは舌打ちをする。


レオが空気の振動を遮断する術を展開したため、ゲーチスも同じようにしただけ。


「……残念です。あなたならきっと、プラズマ団の理想を理解してくると思っていましたのに」


プラズマ団七賢人が1人、ゲーチスが笑う。



嫌な笑み。

あの研究者たちを思わせて反吐が出そうだ。



「あなたなら……ハルモニアとは対の一族であり、且つ人間の愚かさを知っているあなたならば」



奴の言動が、いちいち勘に障る。



今頃になって突然のスタングレネードに文句を言おうとしたミレイが思わず口を噤んでしまうほど。




レオは苛立っていた。




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