風吹きぬける大地W
□剣舞
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レオは警戒心がかなり強い。
それでも、レオが無防備になるときがある。
それはレオが何かに熱中しているとき……主に歴史調査のときだ。
そして、レオは自分の知的好奇心のためなら警鐘を無視して調査を始める。
今回も、そのパターンだった。
「……えっとレオ、あれ何?」
ミレイが指示したのは……人間の2倍はありそうな骸骨だった。
だが、ただの骸骨ではない。
その大きさもだが、人間にはない部分……角や尾の骨まであるのだ。おまけに腕は4本。
「ソードダンサーだな」
対してレオは平然としている。
だが、顔色が悪いのは隠しきれていない。
「強者を求め彷徨う怨霊。大抵は同じ場所に、自分を倒す者が現れるまで巣食いつづけるんだが……俺たちは、奴のテリトリーに足を踏み入れてしまったらしい」
ようやく、レオは嫌な予感が『これ』のことなのだと悟った。
だが、ソードダンサーに目をつけられた以上逃げることは難しい。
「えっと……それって……」
「戦うしかない、ということだ。……下がってろ」
大人しく、ミレイは数歩後ずさる。
戦闘となった以上、ミレイは自分が足手纏いにしかならないと知っている。
だから、レオの邪魔にならないようにするしかない。
『大丈夫よ』
『オレたちにいるからさ』
ディアとニュイも姿勢を低くし、戦闘態勢を取る。
この2匹も、目の前の相手が人知を超えた存在だということを肌身で感じていた。
『ワレ、ノゾム……ナンジ、キョウシャ……』
「……邪魔だ、消えろ」
フィールドはは木々の覆い茂る雑木林。
本来なら身を隠し、ソードダンサーの隙を伺いたいところだが……レオはちらりと背後に立つミレイを見る。
ミレイが後ろにいる以上、レオに隠れるという選択肢はない。
ソードダンサーの握る無骨な大剣が薙がれた。
数十年は生きたであろう木々が纏めてなぎ倒されていく。
ディアとニュイはそれを身を屈めることで避け、ソードダンサーに跳びかかる。
『うおっ!』
しかしソードダンサーが逆の手に持った、もう1本の剣にニュイの騙し討ちは邪魔されてしまった。
「厄介な」
あのパワーも然ることながら、スピードも侮れない。
元々、レオが得意なのは死角からの強襲、もしくは遠距離からの攻撃。
少なくとも正面から、正々堂々というのはレオの戦闘スタイルではないのだ。
「……さて」
相手は怨霊の類。
こういう連中の弱点は光というのが相場は決まっている。
試に相手の弱点を見極めるという、使い捨てタイプの虫眼鏡を使ってみると……案の定。
レオは息を吐いて、どこからともなくナイフを取り出す。
「lux」
光属性を付与する言葉と共に、ナイフを数本投げる。
しかしそのナイフは、ソードダンサーの固い骨に弾かれ、地面に突き刺さる。
効かない。
しかし、そう思ったのはミレイだけだった。
地面に突き刺さったナイフが光を放つ。
セヴァートフェイト。
ナイフが作り出す陣が、ソードダンサーを拘束した。
『よーし!』
そこを好機と見たニュイがソードダンサーへ突進した。
「止まれニュイ!」
そこにレオの制止が響く。
それにニュイが反応するが……動けないはずのソードダンサーの剣が振り下ろされる方が先だった。