風吹きぬける大地W
□秘めた誓い
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この村はもう終わりだ。
そのことは、子供であるマサでも分かった。
掲げる御柱もいない。
村長では纏めきれない。
建物は破壊され、死んだ人間も少なくない。
主に地下に保管されている重要な資料の類は幸いにも無事。
村は建て直せる。
だが、肝心のものがない。
何度も、こんな村がなくなればいいと考えた。
だがそれは、こんな形でではない。
「……くそっ」
少年自身、軽傷とは言い難い怪我を負っていた。
しかし、今その名残は痛みと、血の跡だけ。
「無茶しやがってよ……」
治癒が苦手だと公言していたくせに。
最後まで、自分ではなく他人のために動いた、年下の子供。
良くも悪くも、この村はあの子供を中心として成り立っていた。
だから、その子がいなくなってしまうとどうすることも出来ない。
あの子が生を受けてから、まだ10年と経っていないというのに。
古い因習というものに、改めて虫唾が走る。
「……俺はいくぜ」
既に物言わぬ父、動かぬ母にそう宣言する。
そうして少年……マサは、生まれ故郷を後にした。
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