風吹きぬける大地W
□雪の日
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「そもそもクリスマスとはイエス・キリストの降誕、つまり誕生を祝うキリスト教の記念日だ。その本質は『神の子が人となって生まれて来た事』を祝うことで、現在の暦では12月25日が当たるが、ユリウス暦を使用する宗派は、グレゴリオ暦の1月7日に該当する日にクリスマスを祝っているらしい」
レオの言葉を、ミレイは呪文としか思えなかった。
「つまり」
最後に、レオはそう締めくくった。
「お前はただクリスマスを口実にして遊びたいだけだろ?」
「……そ、それは……そうだけど」
唇を尖らせ、ミレイは視線を逸らす。
「せっかくだからさ、やっぱりはしゃぎたいじゃん」
視線は自然と窓の外へ。
一面真っ白。つまるところ雪景色、というものだ。
そして、日付はクリスマスイブ。
すっかり町はお祭り騒ぎで、そこかしこにカップルらしき2人組がデートをしている。
「……そもそも、あの中に本当の意味でクリスマスを祝っている人間はいるのか、疑問だな」
「ちなみにレオは?」
「どっか特定の宗教に属してると思うか?」
「ううん、思わない」
「だろ? 俺は雑食だからな」
「雑食って……」
「洗礼を受けた道具が必要になったり、祝詞を上げたり、様々な宗教を学びはしたが……結局は身を守るためと、ただの知識欲だからな」
「……もしかして、聖書の内容とか言えるの?」
「新約旧約両方共、把握しているが暗記はしていない」
もちろんミレイには分からない。
「やっぱレオって凄いな〜……ってそうじゃなくて、レオもお祭り楽しもうよ!」
「チッ……」
誤魔化されなかった。
「あー! 今舌打ちした! 私を誤魔化そうったって、そうはいかないんだからね! 今日は一緒に遊んでもらうわよ!」
『……素直にデートしたいって言えばいいのに』
『ねー。ミレイも変なところで素直じゃないよなー』
『普段は捻くれてるくせに、たまに素直になるレオとは反対ね』
『あはは、ホントだ。やっぱいいコンビだよな〜』
「……なんか、ディアとニュイに失礼なこと考えられた気がする」
「どうせ似た者同士、とでも思っていたんじゃないか?」
『……勘がいいのも似てるね』
『本当ね』
2匹が顔を見合わせ、息をついた。
「で、レオ。……駄目?」
どうやらこのやり取りでも忘れなかったらしい。
『ミレイの粘り勝ちじゃない?』
『だね。ま、レオも特に反対する理由ないんだし、付き合っちゃえば?』
2匹の無責任な台詞に、レオは溜息をついた。
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