風吹きぬける大地W

□雪の日
1ページ/4ページ

「そもそもクリスマスとはイエス・キリストの降誕、つまり誕生を祝うキリスト教の記念日だ。その本質は『神の子が人となって生まれて来た事』を祝うことで、現在の暦では12月25日が当たるが、ユリウス暦を使用する宗派は、グレゴリオ暦の1月7日に該当する日にクリスマスを祝っているらしい」

レオの言葉を、ミレイは呪文としか思えなかった。

「つまり」

最後に、レオはそう締めくくった。

「お前はただクリスマスを口実にして遊びたいだけだろ?」

「……そ、それは……そうだけど」

唇を尖らせ、ミレイは視線を逸らす。

「せっかくだからさ、やっぱりはしゃぎたいじゃん」

視線は自然と窓の外へ。


一面真っ白。つまるところ雪景色、というものだ。

そして、日付はクリスマスイブ。


すっかり町はお祭り騒ぎで、そこかしこにカップルらしき2人組がデートをしている。

「……そもそも、あの中に本当の意味でクリスマスを祝っている人間はいるのか、疑問だな」

「ちなみにレオは?」

「どっか特定の宗教に属してると思うか?」

「ううん、思わない」

「だろ? 俺は雑食だからな」

「雑食って……」

「洗礼を受けた道具が必要になったり、祝詞を上げたり、様々な宗教を学びはしたが……結局は身を守るためと、ただの知識欲だからな」

「……もしかして、聖書の内容とか言えるの?」

「新約旧約両方共、把握しているが暗記はしていない」

もちろんミレイには分からない。

「やっぱレオって凄いな〜……ってそうじゃなくて、レオもお祭り楽しもうよ!」

「チッ……」

誤魔化されなかった。

「あー! 今舌打ちした! 私を誤魔化そうったって、そうはいかないんだからね! 今日は一緒に遊んでもらうわよ!」

『……素直にデートしたいって言えばいいのに』

『ねー。ミレイも変なところで素直じゃないよなー』

『普段は捻くれてるくせに、たまに素直になるレオとは反対ね』

『あはは、ホントだ。やっぱいいコンビだよな〜』

「……なんか、ディアとニュイに失礼なこと考えられた気がする」

「どうせ似た者同士、とでも思っていたんじゃないか?」

『……勘がいいのも似てるね』

『本当ね』

2匹が顔を見合わせ、息をついた。

「で、レオ。……駄目?」

どうやらこのやり取りでも忘れなかったらしい。

『ミレイの粘り勝ちじゃない?』

『だね。ま、レオも特に反対する理由ないんだし、付き合っちゃえば?』

2匹の無責任な台詞に、レオは溜息をついた。







.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ