風吹きぬける大地W

□兄の思いを知らず、弟の願いを知らず
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レッドとレオが師弟関係にあることが露見してしまってから、2人は以前よりも大っぴらに会うようになった。

それでも、あくまで周囲に内密に。

ただレッドが、レオと会っているということを隠さなくなっただけ。


だから、いつかこういう場面に出会うということも予想できた。



……しかし内容は少々、いや大分予想とは違っていたが。



「……今日はここまで」

「……ありがとうございました」

苦痛で呻きながらも、一礼を欠かさない。

それから投げ渡されるタオルやスポーツ飲料を受け止め、やって来たブルーたちを見た。

「おっす」

「……何やってんスか、先輩」

「何って……」

困ったように、レッドは片付けをしているレオを見る。


しかしレオは何も答えない。


「訓練、だけど」

「見れば分かる」

グリーンが溜息をついた。


レッドのアンダーウェアはぐっしょりと湿っている。激しい運動をしていたことが丸わかりだ。

対してレオはあまり汗をかいているように見えない。


それが余計、悔しかった。


「……次は1時間で終わらせてやる」

「生憎だが、まだ簡単に衰えるつもりはない。しばらくは3時間だな」

「……やっぱ死にそうには見えない」

「何か言ったか?」

「なーんにも」

分かっているのであろう、レオが笑う。


「……だからさ」


腰に手をあて、ブルーがレッドを見下ろす。


確かに怖いが、それ以上の恐怖が身近にいると考えれば問題ない。


「何で、ポケモンは日向ぼっこしてトレーナーが戦ってるのよ」


「……そう言われてもなあ」

2人が顔を見合わせた。
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