風吹きぬける大地W
□弟子と師匠
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実のところ、レッドとライバル関係にあるグリーンはあまりバトルをしない。
未だ片手の域を出ないのだ。
反対にゴールドとは数えきれないくらいバトルをしている。
今までゴールドは、1度もレッドに勝てたことがない。
本日もまた連敗記録をひとつ伸ばしただけだった。
「バ、バクたろう!?」
もちろんゴールドも油断していたわけではない。
だが、炎タイプであるバクたろう相手に草タイプであるフッシーをぶつけてきたときはその意図が分からなかった。
だというのに、結果はバクたろうの負け。
「フッシー、お疲れ様」
それでも大きくダメージを受けたことに変わりはない。フッシーに傷薬を使う。
「……いつの間にそんな技術つけたのよ」
試合を観戦していたブルーが、カメラの停止ボタンを押してから呆れる。
「いつの間に、って言われてもなあ……」
「甘い香りで動きを鈍くして、火炎放射はツルを使ってバクたろうの体勢を崩させて回避。火炎車を使われる前に突進で技を無効にさせて、毒の粉……か」
「後は接近されないように草結び。光合成で体力を回復させながら持久戦に持ち込んだ」
根性論を割かし重要視するレッドは、その場の勢いで戦うことも多い。
それでもトレーナーとしての修行を積んで大分改善されたが、今回の戦い方は今までとはまったく違っていた。
だからこそ、グリーンとシルバーの視線も自然と険しいものになる。
「ねえレッド。今回のポイントは?」
「えっと……相手に思い通りの動きをさせないこと、かな? 相手のポケモンが何の技を使ってくるのか予測して、それを阻止する……ってのを目的にしてみたんだ」
やはり、レッドの戦い方ではない。
レッドは相手に全力を出させ、自らも全力で立ち向かう。
それをレッドも分かっているのだろう。
「でもやっぱ、俺には向いてないよな。こんな戦い方」
そう苦笑し、フッシーをボールに戻す。
「レッド先輩、やっぱ強いっスね」
「そんなことないって」
「それでも、やっぱりレッドさんは凄いです」
イエローにとっても、レッドとゴールドのバトルは見ているだけで勉強になるものだ。
純粋な力と力のぶつかりあい。
時に奇策を用いた戦法。
全てがイエローにとっては新鮮だった。
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